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とかじり小四郎 ―北条義時―5

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『 とかじり小四郎 ―北条義時― 』

 

「おい、小四郎。五郎はどうしたんだよ? ここで遊ぶ約束をしてたのに来てないじゃないか!」

 見たこともない子供に突っかかられ、小四郎は面食らって押し黙る。

「こら、真朝。小四郎じゃない、小四郎殿と呼べ」

 藤九郎が一応とりなすが、真朝と呼ばれたその子供はその言葉を完全に無視して歩き回っている。

「真朝は比企の子でしてな。今、父親が遠出しているので安達館で預かっているのですが、北条の五郎君と最近仲良くなり、今日は約束があると言って付いて来たのですよ」

「うんうん、それは誠に良いことだな。五郎は姉達に甘やかされて育っているからな。同じ歳くらいの友人がいればよいと思っていた所だ。うんうん」

 頼朝はおっとりと笑いながら続けた。

「だが、五郎は今日はここに来れないだろうよ。朝にひどい悪戯をして政子や保子達に叱られていた。今日は館に足止めだろうさ。うんうん、気の毒なことだ」

 汚れた足でその辺りを歩き回っていた真朝が「えー」と顔を顰める。それからチラと小四郎を見ると何かを思いついたように笑った。

「じゃあ、小四郎。俺を北条へ連れて行け。なぁ、藤九郎。それならいいだろ?」

 藤九郎は真朝に向かってにっこり微笑むと「じゃあ、そうさせていただけ」とあっさり答えた。小四郎に「いいか」と許可を求めもせずに。

 

 仕方なく小四郎は真朝という名のその子供を馬に乗せ、急いで北条館へ戻ると出迎えた保子にその子を託した。真朝はペコリと頭を下げると子供らしい明るい笑顔で保子に向かった。

「安達館におります比企の尼の孫、真朝です。五郎君と手習いをする約束で遊びに来ました。五郎君はいますか?」

 五つくらいの子にしては上出来過ぎる挨拶だ。先程の悪ガキとはまるで別人の豹変ぶりに、小四郎は手にしていた比企の尼からの差し入れを危うく落としそうになる。当然、保子はコロリと騙されて満面の笑みで差し入れを受け取ると、五郎を呼びに奥へと戻って行った。その背を見ながら真朝はニヤリと笑って小四郎を見上げた。

「小四郎は乗馬はなかなか上手だな。快適だった。また乗せろ。約束だぞ」

 そして笑顔で戻ってきて真朝を迎え入れた保子の前で、真朝は小四郎を振り返るとニッカリと大きな笑顔を見せて言った。

「小四郎殿、どうか帰りも送っていただけないでしょうか? 祖母が心配しますので」

 冗談じゃない、と小四郎が口を開く前に保子が前に出る。

「まぁ、当たり前じゃないの! 比企の尼様によろしく御礼を申し上げなくてはだもの。ね、小四郎兄?」

 小四郎はそっぽを向いた。別にいい。誰も自分の意見など聞かないのだから。

 

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