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北条政子の夢買物語 14

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

しばらくして、石和五郎と小笠原次郎は一足先に席を辞すことになった。
「兄が不在で悪かったわね」
「いや、ここに来て本当に良かったです」
「そう? ま、確かに本人に会ってしまったんだものね」
政子が苦笑しながら言ったら、石和五郎は頼朝に向かって礼をした。
「きっとまたお会い出来るでしょう。その際には父がご挨拶に伺うかもしれません」
「父か。いや、いざの時には、そなたをこそ頼りに思うぞ」
「え?」
石和五郎は驚いたような顔をした。力強く微笑む頼朝を前に、若い石和五郎は頬を紅く紅潮させた。政子はあーあと思う。人たらしにも程がある。
「石和殿、このお方は口がうまいから、話半分に聞いておかれた方がいいですよ」
政子は冷静に突っ込む。
「おいおい、ひどい言われようだな」
「ひどいもなにもそのままでしょ」
つん、と返してやる。その時、頼朝は「そうだ」と手を打った。
「今度、お主達に良い物を見せてやろう。我が屋敷に来るといい。源氏の宝刀『髭切』だ」
その瞬間、石和五郎の目の色が変わる。政子はぞくりとした。思わず佐殿の側に寄ってその袖を引き、耳うちする。
「あれは隠しておいた方がいいんじゃないの? だって、あの刀は源氏の大切な刀で、ほら、あいつも狙ってたじゃない」
「ああ、先の悪党どもか。どこかの源氏の」
政子は思わず頼朝の口を手で塞いだ。この男はどこまで馬鹿なのか。どこかの源氏も何も、甲斐源氏、石和五郎の実家の話だ。
「姫」
石和五郎が呼びかけるのを、政子は無言で振り返る。それが答えになった。
「先の市で一悶着あった者達のことでしょうか?」
頼朝はそこでやっと気付いたようだ。
「ああ、石和殿の関係だったか」
「ええ、多分父でしょう。父は『髭切』に並々ならぬ興味を持っておりました。いつか欲しいと。河内源氏ばかりが独占するのはおかしいと言っておりましたから」
他人事のように話しているくせに、その目はぎらぎらと光っている。政子は頼朝の側で身を固くして、じっと二人の会話を追った。
「そうか。では、そなたも欲しいと思っているのか?」
「そうですね。でも私は正直な所、そのような刀の妖力などは微塵も信じておりません。ただ、それを信じる者は多い。だから、そういう輩を黙らせるためには有効だと思っておりますが」
「つまり、欲しいのか」
「そうですね。多分見たらきっと欲しくなります」
「素直だな」
「男ですから」
言って、石和五郎は少年らしく笑う。
すると頼朝も「うんうん」と頷いた。
「美しい武器とは美しい女のようなもの。その姿形を愛で、側において触れて愛してやりたくなるものだよな、うん。まこと、そなたとは話が合う」
「ちょっと、何よその下世話な言い方は。あなたにかかると全てが女になるんだから! まだ純粋な青少年に対してそういう話はねぇ」
言いかけた政子に、石和五郎は静かに微笑んで頭を下げた。
「お気遣いありがとうございます。ですが私にはもう娘がおりますので」
「え」
「生まれたばかりですが」
その瞬間、頼朝は噴き出した。
「ほれ、立派な大人だ」
それから、石和五郎に向き直る。
「『髭切』なら、いつでも見に来るといい。やらぬがな」
「あなたねぇ、そんなこといつも軽々と言ってると、いつか殺して奪われるわよ」
「それはその時。天が私を見放した時だろう」
政子はため息をついた。
「あなたのその能天気な所が私には理解出来ないわ」
「しかし、本当に『髭切』は良いぞ。高貴でつんと澄ましているのが高嶺の花のようで美しくて気高くて。だから大人しく私に従う瞬間、男としてぞくぞく来るものがあるのだ」
政子はもう耳を塞ぐことにした。
「だから、北条の姫、そなたも今度ゆっくり見に参れ」
「え」
「そなたはきっと、『髭切』を良き友とすることが出来るぞ」
つい、うんと頷きそうになって、それから政子は首を振った。
「誰が刀と友達になんかなるのよ! 私には女の友達がたくさんいるんだから、そんな刀なんて友達にしたくないわよ!」

石和五郎、小笠原次郎は、頼朝より先に北条館を出た。
「楽しかったわ。また遊びに来てね。小四郎も珍しくよく喋ってたし」
それを聞いて、二人とも嬉しそうな少年の顔になった。
「是非に!」
それから、二人目を合わせて、懐から何かを取り出した。
「そうだ。北条の姫、こちらは姫様に」
「え?」
それは、木でつくられた精巧な小箱だった。
「小さな物しか入りませぬが」
「どうして私に?」
「『将を射んと欲すれば、まず馬から』と佐殿もおっしゃってました」
「私に媚びを売ったって何もならないわよ」
すると、その言葉に頼朝が反応した。
「お、まさかお前達も美人と名高い北条の三の姫を狙っているのか?」
すると、石和五郎はきょとんという顔をした。
「え?」
「私もそれでここで待っているのだが、出て来るのは一の姫ばかりで三の姫は一向に姿を見せなくて」
「当たり前でしょ。可愛い妹を、誰があなたなどの毒牙にかけますか!」
「この通り、一の姫は私には手厳しい」
ははは、と笑って、頼朝は厠に立った。それを見送りながら石和五郎が口を開いた。
「でも、お二人が仲がよいのは何よりですね」
「え?お二人って誰と誰よ?」
「佐殿と北条の姫様ですが。ご夫婦ではないのですか?」
「何で、私があんな人と結婚しなきゃいけないのよ」
そりゃあ助けて貰ったことはあるが、それくらいで許すつもりなど毛頭ない。
「だから言ったでしょ?私に媚びを売ったって何もならないって。佐殿に近づきたいのなら、直接話して気に入ってもらうか、または美しい姫でも紹介してあげた方がきっと仲良くなれるわよ」
「美しい姫ですか?」
「そうよ、あの男は本当に救いようのない好色家なんだから」
「はあ」
「でもそのうちにね、絶対に巻き添えになって刺されたりするわよ」
一本指を立ててざまあみろという顔をする政子に、小笠原次郎が噴き出す。石和五郎はそれをたしなめるように肘で彼をつつくと政子に向き直った。
「いえ、それはやはり一の姫様に受け取っていただきたい。あなたには龍の気がある。それに気付かぬ佐殿ではないでしょう」
「龍の気?」
「甲斐にも大きな地龍がおります。ここ伊豆にも別の立派な地龍がおられる」
「地龍って何よ?」
「大地の気の流れと言いましょうか」
「よくわからないけれど、神様みたいなものかしら」
「そうですね。そう考えていただいても結構です。だからもし、もし佐殿があなたを手に入れたら、私たち甲斐の者はいつでも佐殿にお味方しますよ」
そんな、ありもしない事を言って、少年二人は去って行った。

 

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