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北条政子の夢買物語 26

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

が、覆い被さろうとした男の頭に、一本の矢が突き刺さる。
「あ?」
男は不思議そうな声を出し、それから手を頭に上げ、矢尻を不思議そうに触ると、そのまま地に崩れ落ちた。
「政子!」
「殿! ご無事か!」
藤九郎盛長が刀を手に駆け寄ってくる。その後ろには、弓に矢をつがえる宗時の姿があった。
「北条の姫、無事か?」
頼朝が刀をもう一度持ち上げるのが見えた。政子は頭を血で染めた男の下敷きになって、動けずにいた。
「無事じゃ、ない」
「ああ、でも、生き延びた」
自分の上でびくびくと震え、死の瞬間を待つ男の鼓動を感じながら、政子は頼朝の声を聞く。
「私は強くない。だが、私は加護を受けている。私は生かされている限り武士でいなければならぬ。だから僧にはなれぬのだ」
そして、『髭切』は鋭く閃いて男の首を刎ねた。

 

結局、三人ともその場で討ち取られた。辺りは血の海となっていた。
頭を射られた男は、政子の上にて絶命していた。どくどくと血を流して。政子は自らの身をしっかりと抱いた。まだあの痙攣が身体に残っているようだった。
「政子、大丈夫か」
宗時の手が政子の肩を掴む。政子は兄の顔を見上げて小さく頷いた。
「帰ろう」
その言葉にも頷きかけて、でも政子は思い出してしまった。咄嗟に手を引く。宗時は驚いたような顔をして政子を見た。
「兄さんとは帰りたくない」
「政子?」
「あ、あんなの、兄さんじゃないもの!」
政子は叫んでいた。

しんと静まり返る空気に、藤九郎盛長が取りなすように声を出した。
「いやいや、姫様。三郎殿は弓に自信がござったから、あやつらを迷いなく射たのでございます。けして姫君には当たらぬと分かっていたからでございますよ。それに、三郎殿だってけして無為に相手の命を奪ったわけではない」
藤九郎盛長は、政子がいるのに宗時が矢を射たから政子が怒ったのだと言いたいようだった。
でも、そうではない。弓を射たからではない。男達を冷静な顔で殺したからではない。そうではないことを政子は宗時に伝えようとしていた。
「違うわ」
恋人がいるくせに私を抱いた。妹を抱いたのだ。
あの時はそれでいいと思ったくせに、誘ったのは政子の方であったくせに、政子は嫉妬で怒り狂っていた。
目を瞑ると、兄との夜が頭に浮かぶ。なのに、気付くと兄に抱かれているのは自分ではなく他の女なのだ。それを無理矢理自分だと思い込もうとすると、突然その兄の頭が矢で射抜かれてしまう。政子はすっかり動転してしまっていた。怖くてたまらなかった。助けてもらいたかった。でも、兄には頼れない。ぼろぼろと涙を流す。首を横に振る。
「私は、ここに残る」
頼朝が驚いたような顔をして政子を見る。宗時は眉をひそめた。
「ここにいるって、政子、おまえまさか本当に佐殿と?」
佐殿と、何? そういう関係なのかと聞きたいの?
政子は答えずに、頬を涙で濡らしながら宗時を睨んだ。宗時はしばらくその政子の顔を見ていたが、政子の肩から手を外し顔を背けると、絞り出すように一言告げた。
「すまない。悪かった、政子」
それは政子にとっては死の宣告と同じことだった。兄は、自分を抱いたことを謝ったのだ。政子はもう堪え切れずにしゃくりあげた。幼子のように声をあげて泣き出す。
その政子の肩を抱いたのは頼朝だった。
「宗時、姫はしばし私が預かるぞ」
否やを言わせない声だった。今まで、上も下もなく親しげに話をしていた二人だった。でもこの瞬間、頼朝は宗時の上にいた。
宗時は何も言わずに去って行った。
政子はその背を黙って見送った。本当は追いたかった。恋人なんて捨ててくれと、私だけを愛してくれと、そう縋り付きたかった。でも、出来なかった。

 

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