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琥珀の龍紋―北条時政―27<アマカケル外伝>

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 辿り着いた鎌倉は、以前とは異なり京に劣らぬ殺伐とした空気に包まれていた。そのまま大蔵へと向かうことも考えたが、少し考えて四郎は敢えて義平の館を訪れた。

「またそなたか。さてさて、今度はどんな宣旨やら」

 左右に大きく口を引き結び、面白くなさそうな顔で四郎を見下ろす源義平に迎えられる。

 四郎は単刀直入に切り出した。

「義賢殿の男児の助命を許可いただきたくお願いに参りました」

 だが義平は憮然とした顔のまま、首を横に振った。

「それは出来ぬ。駒王丸は必ず見つけ出して殺すよう、父から厳命が出ている」

 感情を見せぬ声に、ちらりと源義平を見上げる。

 太郎のあどけない笑顔を思い出す。駒王丸はまだ二つ。太郎と変わらぬ年の男児。

 四郎の僅か咎めるような視線に気付いたのだろう。義平は軽く肩を竦めると口を開いて弁明を始めた。

「お前も武士ならば知っていよう。情けが後で身を滅ぼす。敗者はその場で処断せねば禍根が残る。子孫を守れぬ」

 自分の子だけが大事か。そう言い返そうと思った。

 だが、確かに四郎は知っていた。三浦も工藤も、武士達は……いや皇家も摂関家も、みな我が子大事さに他を顧みないことを。争いを辞さぬことを。

 四郎は言葉を呑み込み、静かに頭を下げた。

「承知しました。その旨、都に伝えます」

 館を辞してそのまま西へ戻ると見せかけ、夜半、月の明かりを頼りに街道を武蔵へ抜ける。

 今宵は観月。だが鎌倉には多数の兵がうろつき、十五夜の宴の支度ならぬ出陣の支度が整っていた。恐らく彼らはこの中秋の宴の明けた朝に大蔵を襲撃する予定なのだ。ならば、その前に子を逃がせばいい。

 確かに自分の子は可愛い。だがその為に他を蹂躙すれば、その代償は将来我が子が払わねばならぬ。そんな愚かな因縁はどこかで止めなくてはいけない。

 それは若さゆえの驕りだったかもしれない。だが四郎はただ太郎の顔を思い浮かべ、気高い理想を胸に街道を走り抜けた。

 四郎の読みの通り、翌朝早くに大蔵は襲撃された。秩父重隆、源義賢は討たれる。だが義賢の子の駒王丸は、攻め手であり秩父重隆の甥でもある畠山重能によって一時匿われ、源義朝の家人である斎藤実盛によって密かに信濃へと逃された。

 

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