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琥珀の龍紋―北条時政―28<アマカケル外伝>

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 伊豆に寄る。ひどくくたびれていた。

 馬を置き、とにかく父に挨拶をしたら阿岐の顔だけ見てすぐに京に戻ろうと重い足を引きずる。

 母屋の前庭からきゃっきゃと愛らしい笑い声が響くのに、ほっと目を上げて、だが四郎は伊豆に寄ったことを後悔した。縁台で太郎を抱く兄と、その兄に添う阿岐の姿が見えたのだ。

 三人の周りを穏やかで優しい空気が漂っていた。

 刹那、幼い頃の風景が蘇る。父は妻を二人持たぬ人だった。母だけを慈しんできた。だから子は兄と自分の二人しかいない。母の膝の上を兄弟が取り合って争うのを、父は隣で優しい笑顔で見守っていた。

 耳鳴りがする。幼な子の笑い声が耳から遠ざかっていく。真上から強く降り注ぐ陽の光がちかちかと視界を白黒に明滅させる。胸の奥から何か苦い塊が戻ってきて、四郎はその場に膝をついた。

 せめて阿岐の文を読んでいれば。気づいてすぐに名乗りを上げていれば。都から飛んで帰っていれば。

 そんな仮定の話ばかりが頭の中を巡る。だが全て遅いのだ。そこからは、もうやり直せない。

 

「四郎、どこへ行くの」

 早朝、朝の支度にと現れた阿岐の手を掴んで厩へと引っ張って行く。

「離してよ、私行かないと」

 手を振りほどこうとするのを許さず、厩舎の脇の松の大木へと押し付ける。逃げられないようにしてから抱きしめる。松の樹肌がゴツゴツと手の甲を削ったが、まるで気にならなかった。寧ろ、滾る熱い血を流し出し冷やしてくれるようで心地が良かった。

「どうしたの? 何かあったの?」

 耳元で甘く転がる声。このまま抱いてしまえたらどんなにいいか。どんなに自分は救われるか。

「何でもない」

 囲いの中で主の気配を察知した四郎の馬が軽く嘶く。出かけるのかとガツガツと蹄を踏み鳴らす。

 そうだ。このまま京へ連れて行ってしまおうか。阿岐だけでも京へ……

 その時、阿岐が身を捩った。冷たく柔らかい何かが額に当たる。掌だった。

「四郎? あなた熱いわ。熱が……」

 ざり、と砂を踏む音が一つ。

「四郎」

 低い声にぎくりと背が引きつる。兄が立っていた。

「何をしている」

 阿岐も一つ大きく震える。

「阿岐、何をしている」

 重ねて問う低い声に、阿岐がそろそろと顔を上げる。

「違うの。四郎……具合が悪いみたい」

 それから四郎は三日寝込んだ。熱が下りてすぐに館を出て京へと向かった。兄の顔も阿岐の顔も見なかった。

 

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