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琥珀の龍紋―北条時政―30<アマカケル外伝>

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「こっち、こっち」

 小さな手に引っ張られて久しぶりに足を踏み入れた林は、四郎が幼かった頃とまるで変わらなかった。昔に雷で倒れたと聞いた大木は朽ちてまだそこにあり、どこからどうやって持ってこられたのか誰も知らぬ不思議な存在感のある大岩も苔むしたままそこにあった。

 外の日差しが嘘のように、林の中はしっとりと涼しく心地が良い。こおろぎら虫達が涼やかに鳴いている。カエルが鳴くには湿気が足りないのか、春の気配がまだ残っているようにも思えた。

「隠れんぼか」

 四郎の手を引っ張る小さな手。柔らかくて温かい。包み込まれ、くすぐったい気持ちになる。

「何も何も、小さきものは、みなうつくし」

 そっと呟く。『清少納言記』は正しい。まさか、自分がこんな気持ちになるとは思わなかった。子とは、それも血の繋がった子とはこんなに可愛いものなのか。

「ここ、ひみつね」

 連れて来られたのは、ぽっかりと天井の空いた小さな広場。四郎は軽く頷く。腰掛けるにちょうどよい高さに倒れた松の枯木の上には柔らかな緑の芽が出ている。白や黄色、色とりどりに群れる小さな名も知らぬ花たちの上を蝶や蜂が飛んでいく。ここは四郎たち兄弟にとっても大事な秘密の隠れ場所だった。

 近所の子らと隠れんぼする時は、四郎はいつもここに隠れた。いや、ここに隠れたふりをして鬼を誘い込み、落とし穴に落としたり、縄に足を引っ掛けて吊るしたりと、ひどいいたずらをした。罠に引っかからなかったのは、兄くらいで……

「太郎、みつけたぞ」

 突如、割って入ってきた声に、はっと振り返る。

「ちちうえ」

 兄だった。ひどく叱られ、帰るに帰れず泣きべそをかいていた自分を迎えに来てくれた、その時と同じ笑顔がそこにあった。

「母上が心配しているぞ。帰ろう」

 元気に返事をして駆け出す太郎。その小さな背を愛しく見送りながら兄の横に並ぶ。懐かしい日を思い出し、ぽっかりと顔をのぞかせる空を見上げながら四郎は口を開いた。

「太郎と隠れんぼをしていました。覚えていますか。昔、兄上と一緒に隠れんぼを……」

「四郎」

 言葉が遮られる。

「太郎と阿岐に近寄るな」

 風が動く。取り残される。林の中から大小二つの対称的な足音が消える。虫がまたそっと鳴きだしてから、四郎はもう一度空を見上げた。ざあっと大きく葉を揺らす風。薄青い空には縦に長く身体を畝らせる白い雲。天から地を睨みつける降り龍だ。四郎は、その気を自らの身へと注ぎ込む。それから肩を上げて、大きく息を吸い込んだ。

「そちらがその気なら、もう構うまい」

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