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琥珀の龍紋―北条時政―32<アマカケル外伝>

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 四郎は目を父に固めたまま、ゆっくりと口を動かした。

「今後の平家の動き次第では、戦況がひっくり返ることも十分にあり得る為、皆が清盛殿の動向を探っております」

 間違ったことは言っていない。

 上皇側はもちろんそれを期待しているだろう。だが平清盛は、その叔父である忠正以外の一族を上げて後白河帝を守護すると内々に伝達をしていた。状況が大きく変わらぬ限り予定通りこのまま戦に突入する。ただ四郎がそれを隠しているだけのこと。

 そこで初めて兄が口を開いた。

「父上、確かに昇進の良い機かもしれませんが、万一のことがあればどうします。北条が潰されてしまうことはないでしょうか」

 父は顎に手をやった。中途半端に生えた髭がぞりぞりと音を立てる。

「では、北条も二手に分けるか。戦の後には恩赦があるもの。源為義殿・義朝殿の親子もそれを狙って両陣に分かれているに違いない」

 四郎は口をつぐんだ。源義朝は敵方を完全に滅ぼす。その子の義平もそう。幼な子の命すら平気で奪おうとした。ならば親兄弟であっても遠慮はしないのではないだろうか。

「狩野殿が鳥羽院側につくなら、それに追随するのが伊豆で生きるには間違いがない。私は北条の主として狩野殿について上洛しよう。だが三郎、四郎、お前たちのどちらかに逆陣営に味方して貰わねばならぬが……」

 しん、と静まる広間。蛙の鳴く声が低く高く、遠く近く聞こえてくる。やはり、雨が近いらしい。

 四郎はさっと兄に向き直ると、頭を低く下げた。

「どうぞ兄上がお決めください。私はそれに従います」

 喉が乾く。胸の鼓動が速まり、全身の毛穴が開いて閉じぬひどい緊張感。痛みを訴える胸を、背を冷たく流れる汗を知らぬことにして四郎は兄の言葉を待った。

 兄は公明正大な人だ。不利な方を弟に押し付けるような真似はすまい。

 果たして、僅かの間の後に静かな声が答えた。

「私が上皇方に参じましょう」

 四郎の喉が、こくりと鳴る。

「四郎は先から鳥羽院につくがいいと言っていた。父上が狩野殿にお味方して今上帝をお守りされるのならば、私が逆陣営に参じましょう」

――見殺しにしていいのか?

 心の中に響いた誰かの声にそっと頭を振る。戦は終わるまで勝敗がわからぬもの。それに決断したのは自分ではない。兄だ。

 父が兄の肩を叩くのが視界の端に映った。

「案ずるな。どちらが勝とうと北条は続く。後に恩赦を願い出れば良いことだ」

 軽く微笑して頭を下げる兄。それから「では、準備を」と小さく声にして兄は立ち上がった。静かに部屋を出て行く。

「四郎、我らも準備を急がねば」

 四郎は「はい」と返事をし、やっと顔を上げて父に向き直る。

「しかし我が北条には兵が少ない。全て連れて行っては警護が危ういし、いかがしたものか……」

「それでしたら、京ではこれから食糧や水が足りなくなりましょう。狩野殿と相談して船で兵糧を運ぶのはどうでしょうか」

「おお、それは良い案だ。食糧や水ならいくらか蓄えがある」

「京へは摂津で船の荷を乗せ換えますが、摂津の水軍は源頼政殿の郎党。頼政殿を通じて兵糧を献上すれば、我らは兵を損なわず恩賞にも預かりやすいかと思います」

 兄が部屋へと戻っていく気配を微かに感じながら、四郎は知らぬふりをして京の様子を熱心に父に話して聞かせた。

 

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