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琥珀の龍紋―北条時政―33<アマカケル外伝>

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 数日後、出立の日。

「殿、どうかご武運を」

 阿岐が兄に深く頭を下げるのを、四郎は目線を落として見ないふりをした。

「義父上、四郎殿、ご武運を……」

 兄にしたのと同じように、父と四郎の前でも頭を下げる阿岐。

「ごぶうんを」

 その横で太郎が母の真似をして頭をぺこりと下げるのに皆の目尻が下がる。

「おぉじ、あのね」

 太郎が手招きするのに耳を寄せる。

「また、かくれんぼしよ?」

 耳に届く軽やかな声。頷いて口元を緩める。兄の視線を痛いほど感じながら、四郎は知らぬふりを通した。

 

 それから少しして狩野茂光に伴って京へと入る。御所と院御所の警護はことに厳しくなっていた。

 ガチャガチャと鎧の音高らかに都の大路を埋める武士達。殺伐としていた京が、更にその色を強める。足りぬ水や食料。路地は重い甲冑をつけた武士達に踏み荒らされ、砂塵で煙る中を悲鳴や泣き声が絶えず聞こえては消えた。

 文月二日、鳥羽院崩御。

 初七日の法要が済んで間もない未明に夜襲があり、翌朝には白河で火の手が上がり、あっという間に勝敗が決した。大敗を喫した上皇方は散り散りに逃げ、残党狩りが行われることとなる。

 一族分かれて戦ってどちらが勝利しようとも、戦後には恩赦を願い、それは暗黙のうちに赦される。

 平安の世にはそんな慣習が長くあった。だが、今回は違った。長く重刑の執行がなかった京の都で『薬子の変』以来の死刑と上皇の流刑が行われる。

 上皇は出家して難を逃れようとしたが許されなかった。讃岐へ配流される。

 貴族の大半は様子見を貫いて大難を逃れたが、摂関家は親子兄弟争った結果、その荘園を大きく削り取られ道長公以来の権勢が最大の危機を迎える。

 だが武士への懲罰は殊に厳しかった。源義朝には父と弟らを、平清盛には叔父を「死罪として首を撥ねよ」との命が下される。

「さしもの義朝殿も、此度ばかりは涙ながらに恩赦を乞うたと」

「だが六波羅の清盛殿の方は命が出てすぐ、躊躇せずに叔父の首を取ったとか。そう聞いては義朝殿も逃れられまい。気の毒に」

 そして京から逃れ地方へ身を隠した武者達は、次々に京へと戻されて処刑されていった。源義朝の弟・為朝は未だ逃走中で行方が知れないが、見つけ次第刑に処せられるだろう。

 四郎は、ごくりと喉を鳴らした。

 兄は死傷者の中にいないようだった。あの大きな体が目立たぬわけがない。混乱の中、うまく都を逃げ出したのだろう。きっと伊豆の北条に戻っている。だが恩赦が叶わない今、もし兄を匿えば父や自分も罪を咎められる。更に北へと逃がすしかない。

「父上、伊豆に戻りましょう。戻って兄を奥州へと……」

 言いかけた言葉が遮られる。

「少し待て。今は皆が混乱している。ほとぼりが冷めるまで待つのだ。時を稼げば恩赦も叶うかもしれぬ。三郎には言ってある。もしもの時は伊豆の館で身を潜めていよ、と」

 そんな楽観的な、と苦く思う。やはり父は兄ばかりが大事なのだ。

 

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