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腑抜けの三郎―北条重時―09

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 海相撲が落ち着き、褒美の取り分けも済んだ頃、おもむろに大男は立ち上がった。

「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」

「駄目だって! 伯父上の所に行くぞ!」

「常盛兄は適当にあしらっとけ」

「そんなわけに行くかよ!」

 巴は父の頭を軽く殴る。頭を撫でながら大男は苦笑した。

「まったく巴は豪毅な女だ。そんなこっちゃ、三浦胤連も愛想を尽かすぞ?」

 父のからかいの言葉に巴はスッと表情を変えた。おもむろに長い足を振り上げ父を蹴り飛ばし始める。それも首や頭、腹を狙って。

「あいてて。おい、急所を狙うのはやめろ」

「父さんには急所くらいしか効かないだろ」

 容赦なく父を蹴り飛ばす巴に、さすがに秀太が止めに入った。腕を掴まれた巴は肩で大きく息をすると、掴まれた腕を勢いよく外してパンと手を叩いた。

「豪毅で結構! 巴御前みたいな女になれと名を付けたのは、父さんなんだからね!」

 巴御前。木曾義仲の愛妾である。敗走の折に義仲と生き別れた巴御前は鎌倉の源頼朝の前に引き出される。

 その美貌に男達はどよめいた。だが巴御前は一捻りで馬上の武士を悶絶させる程の豪腕。寝首を掻かれたら元も子もない。男達が恐れをなして遠巻きに眺めていた所を妻に欲しいと言い出したのが和田義盛だった。

 その頃母を既に亡くしていた義盛の三男・義秀は巴に可愛がられよく懐いた。だから義秀は継母である巴御前の名を自らの娘に付けたのである。そう、この大男こそ三浦と安房の水軍を治める朝夷奈義秀その人だった。

「とにかく荷運びなら私が行くよ。父さんは伯父上の所にすぐに顔を出すんだね」

「嫌だったら嫌だ! 俺は京に行くんだ!」

 義秀は童のように叫ぶと、巴の横をダッと風のように走り抜けた。小舟の先端にぼんやりと座っていた乙姫を横抱きに搔っ攫うと、出航準備がすっかり整えられた船に飛び乗る。

「乙姫は借りるぞ。後は頼んだ! 土産に京の美しい櫛でも買って来てやるからな!」

「櫛なんかいらないよ! この阿呆ボケかす! 溺れ死んでしまえ!」

 娘の罵倒に、義秀は上機嫌で笑いながら手を振った。

 当時、鎌倉に幕府が開かれたことで太平洋側の海上交通も急速に発展を遂げていた。

 東国の三浦半島や安房には、律令の頃に紀伊国や瀬戸内から朝廷の迫害を逃れて流れてきた海の民が住み着いていた。それが土着し土豪となり、海と山とを統べて武士団となった。

「海賊は自由の民だ。どこに住むも勝手さ」

 義秀はよくそう言った。確かに彼らは自由だった。商船の荷運びをしたかと思えばその荷を襲う。波の荒い灘を親切に案内したかと思えば、高い関銭をふっかけて巻き上げる。漁で獲った魚を売り歩いていたかと思えば、刀を奮って戦に赴いたりもした。

 三浦半島を治めるのは三浦氏。その現当主は三浦義村。彼は鎌倉幕府に忠誠を誓い、幕府中枢で重きをなしていた。だが一般には『三浦の主は和田義盛』とそう思われていた。和田義盛は頼朝挙兵以来の武勇の士で侍所の長官を長く勤めていた。

 和田義盛の父は三浦の嫡男・義宗。だが義宗が早逝した為に家督は義宗の弟・義澄が継ぎ、その子の義村へと流れた。和田義盛としては「自分こそ三浦の嫡流」との自負があったのだ。武の義盛、知の義村。両者は密かに反目し合っていた。

 

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