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腑抜けの三郎―北条重時―12

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 三郎はそっと駆け寄ると彼女の手を引いた。驚いて目を見開く少女。

「早くこちらに」

 従者が引き戻して場から遠ざけていた牛車の中に少女を押し込め、衣を少女に被せると御簾を下ろし、自分は牛車の前に長く突き出した轅(ながえ)を支えた。

 その頃には、牛と大男の大相撲は大詰めを迎えていた。

「よぉし、お前ら、最後の仕上げだ! 取り囲んで生け捕るぞ!」

 大男の声を合図に両脇から男達が踊り出た。牛の肩から前肢にかけて拘束する。牛は捕えられた前足と鼻先を振り払おうと足をガツガツと踏みしめ蹴手繰り、必死に抵抗してみせた。

「牛なんぞ、鯨に比べりゃ赤子も同然! 成敗して食ってくれるわ!」

「おお! 今日は焼き肉だ!」

 具親が真っ青な顔で叫ぶ。

「牛を成敗してはならぬ! 牛が死んだら、私はどうやって屋敷に戻ればいいのだ!」

 男達は牛と力比べをしながら、しばし動きを止めて顔を見合わせた。

「……だってさ。どうする?」

「でもなぁ、鯨の肉も美味いが、牛の肉はこれまた美味いぞ」

「牛でなく、馬に曳かせたらどうだ?」

「そりゃあいい。牛車は遅くてかなわん。馬が引けば歩みも早くなる」

「犬という手もあるぞ。何匹か連れてくれば走るんじゃないか?」

 好き勝手言う男達に、具親が悲鳴をあげた。

「犬が曳くなんて、冗談じゃない!」

 そんな具親をよそに男達は楽しそうに笑い、とうとう牛をねじ伏せた。牛は何とか殺されずにその場に膝をつく。

「どうだ! 見たことか!」

 高笑いし、気持ち良さげに汗を拭う大男。具親は拍手しながら立ち上がった。 

「いや、素晴らしい! 無双の怪力とはまさに貴殿のことを言うのですな」

「ハッハッハ、いやいや、まぁ、もっと言ってくださいよ」

 上機嫌で頭をかく大男の横で、具親はそっと後ろを振り返る。三郎が小さく頷いて見せると、具親は扇で口を隠して目を細めた。

「是非とも御礼をさせていただきたいのですが、生憎今は先を急いでおりまして。後でご挨拶に伺わせますれば、お名前を頂戴出来ますか
な?」

「ハッハッハ、御礼ですか? それ程のこともしておりませんが、でもまぁ、くれると言うなら喜んで。私は朝夷奈三郎と申す。在京の鎌倉御家人に聞けばすぐわかりますよ」

「朝夷奈殿ですか。それにしても、まことお強い。さすがはもののふですな」

「ハーッハッハッハッハ!」

 三郎が牛車に乗り込むと、少女が衣の端から顔を出していた。

「シッ、ちゃんと隠れて!」

 衣を引っ張って少女をしっかりと隠す。御簾を上げて具親が乗り込んできた。従者が車を牛に繋ぐと、牛はフンと鼻息を鳴らし、身体を大きく揺すらせて歩き出した。

「ではでは、またいずれ……」

「ハッハッハ、いやいやお気を付けて」

 上機嫌な大男の横を牛車はガラガラと通り過ぎて行く。牛車の中で具親も上機嫌で笑っていた。

 少女がまた衣の下からそろそろと顔を出す。具親は少女と目を合わせると頷いて微笑んだ。

「おお、そなた。無事で良かったの」

 具親と三郎に交互に顔を向け、目を瞬かせる少女。

「それにしても楽しかったのぅ。あれらは鎌倉武士であろうか」

 暢気な具親に、三郎は呆れながら答える。

「牛車が壊されなくて良かったですよ」

 ハハと具親が笑う横で少女が口を開いた。

「どなたか存じませんが、下ろしてください」

「まぁまぁ、ここで会ったのも何かの縁。送ってしんぜよう。どちらに行かれる?」

 にこやかな具親に、少女は肩を竦めると小さく溜息をついて座り直した。

「祇園社です」

「祇園社? すぐそこの?」

「ええ。龍穴があると聞いたからお参りに」

「ああ、聞いたことがあるぞ。社の本殿の下には大井戸があって龍が眠っているとか」

 その途端、三郎は眉をしかめた。

「龍? 何でそんな所に好き好んで」

 小さくぼやいた三郎を、少女はむっとした顔で睨みつけてきた。

「何よ、お参りに行ったら悪いわけ?」

「悪くはないけど、龍に食べられても知らないからな」

 途端、少女が噴き出した。

「食べられる? 龍なんて伝承に決まってるじゃない。意気地なしね!」

「意気地なしじゃないよ。龍にはいい思い出がないだけだ!」

「へぇ、龍の怖い夢見て寝小便でもした?」

 三郎の顔が真っ赤に染まる。

「な……っ、女の子がそんなはしたない言葉を使うなよ」

「あら、お育ちが悪くて悪うございましたわね。でも女御様だって鎌倉の御台様だって誰だって小便くらいするのよ。するんだから言ったって構わないでしょ!」

 三郎の真っ赤になった顔が今度は真っ青になる。なんて女の子だ。

「し、したとしたって、わざわざ口にするのとしないのじゃ大違いだろ」

「あーあ、公家の坊っちゃまって軟弱ね」

 呆れ顔の少女に、三郎はついムキになって言い返してしまった。

「僕は公家の子じゃない。武家の子だ!」

 

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