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「魔女か天女か」中村ふみ「歴史感とスピード感と女流ならではの安心感」

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中村ふみさん「魔女か天女か」

ゴールデンエレファント賞受賞「裏閻魔」の作者の作品。

ひと言。よく練られた面白い本でした。
展開が早く、一気に読み終えました。

豊臣秀次の謀反疑い>自刃という、秀吉末期の不穏な時代。

その秀次に輿入れが決まって上京することになった東北の姫が、
道中に不思議な鉄砲を抱えた僧と同行することになり……

歴史を多少知ってる身ならば、
「うわー、秀次への輿入れ?! やめとけ、やめとけ!」
と最初からドキドキして読み進めることになります。

この作品は時代小説というより、時代ファンタジーかな、と。
歴史上の人物や設定は可能な限り、史実に近かったし
それらを捻じ曲げない程度にうまく活用しつつも、
ちゃんとファンタジーになっていました。

    キーとなっているのは

  • 新時代の鉄砲
  • 隠れ村の火薬作り
  • 秀吉の子
  • キリシタン

でしょうか。

女性作家なので、安心して読めた部分もあります。
でも男性視点で読むと納得がいかないこともあるかもしれません。
確かに展開が強引だったりご都合だったり。秀吉さんの反応がちょっと……だったり。最後の戦闘シーンがもう一つわかりにくかったり。
でも、その辺を差し引いても面白い流れで、飽きずに読めるスピード感があります。

また、タイトルの「魔女か天女か」も単純なものではなく、登場したあらゆる女性に適用出来るくらい。つまり女性を深く描いた女性ならではの作品だと思いました。

だから出てくる男衆は、悪人も含めて、大半の皆様がとっても紳士的。いわゆる少女マンガに出てくる男の子キャラ的な安心感がにじみ出ていて、私は安心して読めました。

浅い部分と深い部分、守る部分と守りたい部分、男女でやはり温度差ってあるよね。

話が飛ぶけれど、先日家族が『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版を見ているのを横目で見ていたら『ヤマトは男の船だ!』とか豪語していて、(ああ、そうだよね。)と森雪のセクシーラインピタピタのスーツを見ながら黙って頷いてあげました。

そういう意味で言うと、男女両方に評価される作品って、やはりすごいなぁ。

 

LULUSIA-ルルシア-

 

さて、話のあらすじやらキャラやらをカンタンに。

以下、ネタバレになるので、お気をつけください。

序章は、豊臣秀吉の雑賀衆攻め。
根来の落ち武者が落ち延びようとしていた先に尼寺があった。
だが、戦の飛び火でその尼寺も焼け落ちようとしていた。
その尼寺から一人の赤い髪の子供が出て来る。
根来の落ち武者はその子を拾って東北へと落ち延びた。

そして本編。時代は戦国末期、秀吉の天下統一後。
関白は、秀吉の甥の秀次が継いでいたものの、
淀殿が秀吉の二人目の子を産んだことで、不穏な情勢となった頃。

一人の東北の国の姫が、関白秀次の側室になる為に上京するが、
その道中、賊に襲われる。それを助けたのが不思議な銃を持つ僧。
どうあっても上京せねばならぬ姫は僧に同行を求める。
実はその僧は女で、序章で根来衆に助けられた赤い髪の子供、千寿だった。

だが、千寿自身もその身を狙われていた。理由は手にしていた銃。
子供を救った根来の落ち武者は鉄砲鍛冶で、火縄銃よりも進化した
雨にぬれても撃てる銃を完成させていたのだ。
その銃を伊達の忍び衆はずっとつけ狙っていた。

姫が京に入る直前、関白秀次の切腹と、妻子達の殺害指示を知った一行。
姫は同じく側室に上がる予定だった最上の姫の助命を願うが叶わず
行きずりの女から譲ってもらった焙烙玉で屋敷を爆破しようとする。

すんでのところでそれを止めた千寿だったが、代わりに囚われの身に。
だが千寿は秀吉の娘であることを明かし、秀吉への目通りを願う。
千寿の母は、魔女だからと外国で売られて日本にたどり着き、
信長に献上されて後に秀吉へと下された金髪の女だった。

その頃、姫に焙烙玉を渡した女は、ある隠れ里で白髪の女(まどな)の
世話をしていた。まどなはキリシタン達の聖母的存在だった。
キリシタンは外国との交易が出来るから儲かる。
また海外に渡りたいという女を違法で売れば更に儲かる。

隠れ里で焙烙玉を違法に作らせ、女達を海外へと売りさばいていた男は
秀吉の天下をも転覆させる計画を練っていた。
その手駒は、まどな、とその娘、千寿、もとい、るちあ。
だが、男はまどなの魔女の手によって、その身を破滅させる。

男の身の破滅と同時に、焙烙玉を隠し作っていた村も暴かれ
村民は危機に陥る。千寿は銃を手に秀吉軍と戦う。
そして、最後・・・

という話。
途中に仄かなロマンスがあったりします。
最後は、うん、まぁ、納得の終わり。

決め台詞は「けっこう!」ですかね。
やはり決め台詞って大事だね。

色々なキーを散りばめて、出会わせて、
最後ちょっとだけ上向きの未来を予感させて。
うまいっすね。

賞をとったという「裏閻魔」も読んでみたくなりました。
そっちは三部作だそうで、ちょっと時間がかかりそうだけど。

 

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