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とかじり小四郎 ―北条義時―15

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『 とかじり小四郎 ―北条義時― 』

 

 先程まで案内してくれていた僧には礼を言って箱根権現へと戻した。

「辛気くさい顔しやがって。初陣だっただか?」

 確かに初陣だが、この疲れはそればかりではない。でも説明など出来なかった。父が自分を、兄を殺そうとするなど信じたくなかった。でも面倒だったから頷いた。石和五郎は軽く首を竦める。

「よく生き残ったじゃねぇか。負け戦の初陣で怪我もなく生き残ったこんは生涯自慢していいぞ」

 あっけらかんと笑われるが、自慢など出来るわけがない。どうせなら最初の石橋山の戦場で戦死していれば、誇り高い死を迎えられたかもしれないのに、とやけっぱちな気分にすらなる。

 悔しいのか、悲しいのか、辛いのか、もうわからない。ただわかるのはそれでも生き残ったということだけ。腹が減って惨めで、喉が渇いて苛々として、鎧が重くて足がふらついた。

 そこでハッと気付く。鎧を外さなくては。

 その場であぐらをかくと腰の刀を全て抜いた。銅の上から巻かれた刀紐を外す。肩あてを乱暴に取り去る。肩あてを留める紐がとかじっていたが、気にせずに引きちぎる。頭から抜く。銅を外す。その途端に外気が通って汗ばんだ身体をサアッと冷やしてくれた。

「何してる? 鎧を脱いだりして」

 石和五郎が咎める声を出したが、小四郎は答えずに鎧を全て脱ぎ捨て、おもむろにそれを手に取ると崖から下に投げ落とした。途中の枝に引っかかったのか大きな音はしなかった。小さくチリンと高い音が暗闇に響く。

 ふと、懐に違和感を感じた。手を差し入れて思い出す。兄が小四郎に握らせた物がそこにあった。一瞬迷ったが、そのままそのものを見ないで奥へと滑らせた。

 

 鎧をすっかり捨て去って戻った小四郎に石和五郎は待ち構えていたように声をかけた。

「木曽に一緒に行かんか?」

「行かない」

 即答した途端、石和五郎は噴き出した。

「『行けない』が『行かない』に変わったか。よし、約束しろし。いつか俺とおまんとで国をこさえるぞ」

 笑う石和五郎を小四郎は不審な目で見る。心がひどくやさぐれていた。でも石和五郎はそんな小四郎を気にせずに続ける。

「覚えとけ。戦の時もそうでない時も、天の意思を読み、地の流れを感じ、人の思惑を先んじて封じろ。勝ちは自ら呼ぶもんだ。待ってておのれに都合良い気が流れてくれるもんか。呼び寄せるか自ら近付くんだ」

 そう言って、木立の向こうの切り立った山を指差す。

「山や谷を見りゃ地脈から陣の位置を決められる。雲を見りゃ立ち昇る気配で天気がわかる。天気がわかりゃあ人の動きも大抵が知れる。そうやって一つずつ勝算を上げていく」

 石和五郎の言葉は耳に入って来る。頭では理解出来ている。だが、心が付いていかない。

「おまん、先の合戦を見ていたんだろ? どうして少数だった俺らが圧勝したかわかるか?」

 数の上では圧倒的に攻め手の軍の方が多かった。なのに彼らは弓を使わず、わざわざ刀を手に不利な戦い方を仕掛けていた。石和達が散開して弓で狙いにくかったのかとも思ったが、あまりに不自然な戦だった。

「奴らは弓を使わなかったんじゃない。使えんかった。弦が全て切られてたんだ。あいつら、鼠がかじったなどと言ってたが、鼠がそんなもの百本もかじるもんか。隠の者に手を回させたんだ。武器の管理を怠った時点であいつらは負けが確定していた。兵法とはそういうもんだ。無鉄砲と勇猛果敢は違う。勝つべくしてから戦いを仕掛けねばならんのだ」

 小四郎の目の前に、竹の筒状の物を差し出す。

「これをやる。励め。いつか俺らの国をこさえる為にも、おまんは自分の身を守る術を身につけるべきだ」

 渡された竹筒は見た目の小ささの割にズシリと重かった。

「仕込み杖だ。中に打矢が入ってる。振って飛ばすこんも出来るし、一本ずつ取り出して投擲するこんも出来る」

 キリキリと竹筒を開けば、中にぎっしりと仕込まれた短い矢。先程小四郎を狙った短い矢だった。

「千日その道を続けりゃ一角の技は身につくちゅう。約束だ、生き残るために鍛錬しろし。言い訳は聞かんぞ」

 これだけ落ち込んでいる自分の横で、嬉しそうに自信たっぷりに喋る石和五郎を見ながら、小四郎はまるで龍とでも話しているかのような気分でいた。まるで現実感がなかった。自分は父の思惑通りに死んだか、または伊豆にいて夢を見続けているのではないかとそう思った。思いたかった。

 

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