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とかじり小四郎 ―北条義時―1

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『 とかじり小四郎 ―北条義時― 』

 

「小四郎兄ぃ、五郎見なかった?」

 離れの部屋に、ひょこりと顔を出したのは妹の保子。小四郎はその時、絡まった直垂の胸紐と格闘していた。

「あら、またとかじったの? きつく結え過ぎなんじゃないの?」

 ケラケラと笑う妹を無視する。

「そんなの奥さんにやって貰えばいいじゃない。毎日実家に帰ってこないでさ。折角、館を新しく建ててもらったって言うのに八重様しか住んでないじゃない。通い婚しなくていいから楽なんじゃないの?」

 ベラベラと喋りながら保子は部屋の中を漁っていく。めぼしい物を見つけては拝借と称して奪い去るのが保子の得意技だ。今日は義母から渡された京風の小物を手に取ると、懐の中にしまい込んでいった。

「いいなぁ、私も早く家を出たいなぁ。どこかにいい殿方はいないかしら? お姑さんがいなくてぇ、お舅さんもいなくてぇ、筋骨隆々で逞しくてぇ、頭はそんなに良くなくてもいいからぁ、料理が出来ないとか縫い物が下手だとか、そういう細かなことは気にしない豪毅でぇ、土地持ちでぇ、家柄のいい男の人」

 そんなのいるわけがない。万が一そんな人物が存在したとしても、保子を選ぶわけがない。そうは思ったが小四郎は黙々と紐を解くのに集中する。口は災いの元だ。

「ね、着替えるんなら頭から直垂を抜けばいいんじゃないの? いつまでも顰め面してないでさ」

 それはその通りだが、小四郎はそうしたくなかった。保子とは違い、細かな所が気になる性質なのだ。

「いい加減、父さんに荷物ごと放り出されるわよ。でもま、義母上は男衆には優しいから引き留めてくれるだろうけどぉ」

 ふと保子は小四郎ににじり寄ると、声をひそめて耳打ちした。

「あのね、私、あの人が宗時兄ぃに言い寄ってる所見ちゃったのよぉ」

 保子の顔を見れば、言葉尻はひどく非難する風なのに、その目は期待感満載でキラキラと輝いていた。

「元々あの人は宗時兄ぃの許嫁だったし気持ちはわからなくはないけどさ。もう父さんと結婚した身でしょ? よくやるわよねぇ。狐みたいな顔しちゃってさ。『この女狐めっ!』ってまさにあの人の為にあるような言葉よね。父さんはさ、なんて言うかギラギラしてて脂っこいって言うかぁ、猪みたいじゃない? だから獣同士お似合いだと思うんだけどね」

 自分で言いながら的を得たのかケタケタと笑い転げる保子。義母のことを『あの人』呼ばわりの『狐』扱い。父親は脂っこい『猪』。保子にかかったらロクでもない。

「そりゃあ、宗時兄ぃはいい男だし、父さんと並べちゃったら惜しいことしたなぁって思ったんでしょうね。でももう遅いってーの」

 ひどい毒舌を吐きながら舌を出して見せる保子。姉妹の中で一番嫁の貰い手がないのは保子だと思う。姉の政子は男勝りではあるがここまで人をコケにはしていない。

「あ、もしかしたら小四郎兄ぃの所にも迫りに来るかもよ。今のうちに江間に荷物を引き上げた方がいいんじゃない? 私は嫌よぉ、父さんと小四郎兄ぃの泥沼戦争なんて。あ、でも一番危ないのは佐殿か! 佐殿の女好きは筋金入りだもんねぇ。わぁ、そうしたらそこに姉さんも混じって大乱闘になるの? 嫌だぁ、凄絶な争いになりそうじゃない?」

 嫌だと悲鳴を上げながら、やっぱり期待に爛々と目を輝かせる妹を、小四郎はただただ無言で眺めた。でもその小四郎の前で保子は突然顔を曇らせた。

「でもさ、政子姉は宗時兄ぃと結婚すると思ったんだけど」

 珍しく真顔になった保子に、小四郎はそっと目を横に流した。そうだ、父にはそのつもりがあったはずだ。宗時は時政とは血の繋がりのない妻の連れ子だった。だけれど嫡男と定め、時政と宗時の関係は良好だった。そう、新しい義母がやってくるまでは。降って湧いたような駆け落ち騒ぎがあるまでは。

「とんだ台風だわね」

 小四郎は知らん振りを貫いた。小さな溜息をつくと手を下に下ろす。

 引っ張ってもほぐしても、頑としてとかじったままの胸紐。諦めて直垂を頭から抜く。丁寧に畳み、とかじった胸紐がわかるように置くと立ち上がった。

「あら、出掛けるの? 蛭ヶ島? 石和五郎殿はまだ滞在してるの?」

 政子と結婚する前に頼朝が住まっていた蛭ヶ島の家屋は、今は人に貸していた。

「石和殿もなかなかいい男なんだけどね。もう正妻も嫡男もいるからなぁ。あーあ、どこかにいい男落ちてないかなぁ」

 保子のぼやきには構わずに戸を開ける。その途端、台所からいがみ合う声が聞こえてきた。姉・政子の声と、義母・牧の方の声だ。

 

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