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とかじり小四郎 ―北条義時―25

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『 とかじり小四郎 ―北条義時― 』

 

 だが、別に何の問題も起きなかった。頼朝は時政が伊豆へ行った直後こそ慌てて小四郎を呼びつけたりもしたが、他の氏族が呼応しての内乱が起きる可能性がないと見るや、やっと厄介払いが出来たとばかりに上機嫌で政子の機嫌を取っていた。

「やぁ、小四郎。よく鎌倉に残ったな。これは褒美だ」

 そう言って、頼朝は上等な馬や衣などを小四郎に渡した。それからこっそりと小四郎に耳打ちする。

「政子の具合があまり良くないんだ。様子を見に行ってくれないか?」

 自分が顔を見せれば、余計に姉の気を逆撫でするに違いないと思ったが、頼朝に手を合わされ仕方なく小四郎は姉の部屋を訪れた。

 だが部屋には先客がいた。保子だった。

「あら小四郎兄ぃ、お久しぶり。今回は大変だったわねぇ」

 ケラケラと笑う保子の無頓着な顔が、でも今の小四郎には救いだった。

「ね、姉上。私も子が出来たの。多分男の子だと思うわ」

 ポン、と自分のお腹を叩く妹に、政子はゆるゆると笑った。保子は頼朝の弟、阿野全成と結婚していた。確かに血筋はよく、舅や姑はおらず、妻としては特に何もしなくても事が足りる立場。とんだ高望みだと思った保子の結婚願望はしっかりと実っていた。

「父さん達、伊豆で宗時兄ぃのお弔い、ちゃんとやってくれてるのかしら」

 呟いた保子に、政子の肩がビクリと震える。政子の顔色の変化に、慌てて保子を制しようとした小四郎を逆に制し、保子は姉を睨みつけた。

「姉さんらしくもない! 兄さんは戦死したんだからしょんないでしょ!」

 政子は憎しみを込めた目で保子を睨み返す。

「何も知らないくせに勝手なこと言わないで! 兄さんは殺されたのよ! 父さんに!」

 保子は一瞬息をのんだが、でもゆっくりと首を横に振って続けた。

「兄さんが懸命に生きたことに変わりはないわ。それに兄さんは姉さんがそんな風に誰かを呪ったり恨んだり疑ったりすることなんか絶対望まないと思う」

 政子は首を背ける。

「私は許さない」

 保子は身体を重そうに引きずりながら姉の前に顔を突き出した。

「ねぇ、姉さん、思い出してよ。兄さんは何の為に頼朝殿を立てて挙兵したの? 無理だって笑う武士達もたくさんいたけど、父さんも兄さんも小四郎兄ぃも、それにあのへたれの御所様だって皆必死で戦って、必死で逃げて、武田を呼んで、安房で味方を集めて、そして今この鎌倉にいるんじゃない! そうじゃなかったら私たちは今頃死んでたかもしれないし、どこか食べるものもない山奥で飢え死にしそうになってたかもしれないのよ?」

 保子の声は伊豆の時と変わらず大きくて、屈託がなく真っすぐに身体に入ってくる。

 小四郎は顔を背けた。伊豆の山が見える気がする。懐かしい緑の山々。庭を駆け回る五郎と保子の姿が遠く脳裏を掠める。

「あのへたれの佐殿がどうして奥州へ逃げずに兄さん達と一緒に挙兵したと思ってるの? 姉さんと姫を守る為じゃないの! 彼は姉さんを見捨てなかったのよ。守る為に立ち上がったのよ!」

 政子は保子を見上げた。音もなく涙がするすると零れゆく。

「しっかりなさい」

 保子は母のような口調で政子を一喝すると、ふぅと腰を下ろし、自分の腹を撫でた。

「あー、重いったら」

 それから笑う。

「赤子って重いのね。私、重いの嫌いなのよ。早く生んでしまって、すっきり身軽になりたいわ」

 それからしばらくして様々なほとぼりが冷めた頃に時政はこっそりと鎌倉に戻ってきた。

 

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