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とかじり小四郎 ―北条義時―38

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『 とかじり小四郎 ―北条義時― 』

 

「はぁ? 義時が花嫁を馬に乗せて逃亡した?」

 素っ頓狂な声を上げた頼朝に、ぶっと噴き出す石和五郎。

「あの、しんねりむっつりめ、随分と面白いことをするじゃないか」

 その横で畠山重忠が呟いた。

「馬が可哀想に……」

 頼朝がそれを聞きとがめる。

「どうして馬が可哀想なんだ? 二人も乗せて重いからか? だが小四郎は細いし姫の前も小さい。お前一人の体重とそう変わらんと思うが?」

 重忠は大きな身体をゆすって座り直し、真面目な顔で言った。

「いいえ、牝馬の発情期は終わったばかりです。牡馬はしばらく結婚出来ないというのに、新婚の二人など乗せて可哀想にと言ったのですよ」

 その途端、その場にいた男達が皆笑った。笑って盃を掲げる。

「新婚の義時に、馬気狂いの重忠に、そして大いなる鎌倉の主、将軍様に!」

 

 鎌倉の秋。実りの秋。

 この夏に征夷大将軍となった源頼朝は大きく開け放たれた蔀戸から顔を覗かせた。半分くらい欠けた月が、遠く山の端から顔を出しかけていた。

 

ー終ー

 

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