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北条政子の夢買物語 11

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

「困ったわ。どうして合わないのかしら」
政子はその晩、帳簿を片手に顔をしかめていた。
一家の女主人として家計を預かる政子の大切な仕事は帳簿付けなのに、その日はどうしても計算が合わなかった。
「市で買い物した時にお釣りを間違えたのかしら?」
購入した物品はあれで全部のはずだ。全て政子が検品した。お金を持って行っていたのも政子だけのはず。そこまで考えた所で、政子は思い出した。
「あ、そうだ、兄さんに渡したあのお金!」
政子はやっと思い出すと、ぽんと手を打った。市で兄が正月用の漆器を指差した時に渡した金子。あれが入れば、ちょうどぴったり勘定が合う。
政子はすっきりとした心地で、ほう、と天井を仰いだ。
「兄さんったら、珍しいわね」
兄はあの日、漆器を持ち帰らなかったのだ。買うと言っていたのに。きっと、買わずに逃げることが出来たのだ。その後は懐かどこかにその金子を入れて、きっとそのまま忘れてしまったに違いない。明日確かめてみよう。そう結論づけると、政子は片付けを始めた。
「早く眠らなきゃ」
もう大分夜も更けている。政子の朝は毎日早いのだ。手早く帳簿を片付けると、寝る準備を始めた。

と、ほとほとと戸を叩く音がする。
政子は不思議に思った。足音がしなかったからだ。それなりに年数の経ったこの館は、廊下を歩けば、例え体重の軽い五郎でもきしきしと足音がするはずだった。
でももしかしたら、集中していて軽い足音は聞こえなかったのかもしれない。政子はそう思い声をかけた。
「どうしたの、五郎?怖い夢でも見た?」

すると、戸がするするとまた軋みもせずに開き、そこから顔を出したのは一人の男だった。
「え?」
政子はぎょっとして身を強張らせる。まさか、また例の代官館の男達だろうか?

が、戸を開けて入ってきたのは、見たこともない男だった。いや、見たこともない姿をしているモノだった。手足はある。人間の男と同じくらい。顔もある。それなりに整った顔をしている。着物もきちんと着ている。真っ白で変わっているけれど、一目見てわかる上質なものだ。でも、その頭の上に何故か犬の耳のようなものがついている。
おまけに、尻の辺りでふわふわと揺れているのは、黄金色をした長い毛の……尻尾?

「あ、あなた、まさか物の怪?」
物の怪に「物の怪ですか?」と聞くなんて間抜けだと思いつつも、政子は素直にそう尋ねていた。するとその犬の耳をつけた男は、明らかにむっとした表情で政子を睨んだ。
「失敬ダナ、そういうお主こそ物の怪のようではナイカ」
その言葉に、政子は眉を吊り上げる。
「何ですって?」
「ソウソウ、異形を恐れぬお主の魂こそ物の怪のようなモノ」
くすくすとからかうような物言い。政子は「ああ」と手を打った。
「わかったわ! これは夢なのね」
さっき帳簿をつけている時、とても眠かったのだ。いつの間にか眠って夢の世界に入っていたのに相違ない。
では、と政子は中空に手を伸ばした。
「弓よ出よ!」
この口の悪い物の怪を、弓で早々に退治させてしまおう。

が、弓は出てこない。
「変ね、夢の中のはずなのに」
そう、政子の特技。
夢ならば、政子はその内容を自分で思い通りに動かすことが出来た。過去に見た夢は、ほとんどそう出来た。なのに。

左手を上げ、おかしな体勢で固まる政子を、その男はしげしげと眺めると「ウム」と頷いた。
「お主はモシヤ夢の方が都合良いのダナ?わかった。デハ、望み通りにしてヤラウ」
そう言うと、ぱちん、と指を鳴らす。

気付けば、政子は高い崖の上にいた。
「あれ?」
なんだろう。見覚えがあるような気がする。
「ホレ、早く登らぬか」
耳のすぐ後ろで声がする。振り向けば、白いキツネが宙に浮いて、ぴしぴしと政子の尻を叩いていた。

「あ」
政子は思い出す。これは、時子が買ってくれと懇願していた夢ではないか。ということは、頂上に辿り着いたら、日と月が落ちてくる。
冗談ではない。自分は時子の夢など買う約束はしていないのだ。
政子は頑として足を踏ん張ると、白キツネと正面から対峙した。
「待ちなさい! 夢違いよ。これは私の妹の夢じゃないの!」
白キツネを睨みつける。が、白キツネはふるふると尻尾を振って否定した。
「イイヤ、確かにお主に譲ラレタ」
「違うわよ! 買ってないって言ってるでしょ! 消えてよ!」
政子は叫ぶ。白キツネは細い腕で耳をちょこんと塞ぐと、ハアとため息をついた。
「呆れた騒々しいヤツじゃ。ま、ソノくらいだから八幡様も気に入られたノカ」
「何をわけのわからないことを言ってるのよ!」
政子は左手をまた伸ばした。
「弓よ、出よ!」
その途端、手にずしりとした重みが加わる。政子の宣言通り現れたのは、黒塗りの立派な長弓。
「保子が言ってたわ。私ならキツネを射殺して、『タヌキだったら良かったのに』って言うだろうって」
言いながら矢をつがえ、きりきりと弓を引き絞る。至近距離の白キツネの額を狙い、迷わず放つ。矢は唸りを上げ、キツネの眉間を射抜いた。
と思ったが、当たったと思った瞬間、キツネの姿は掻き消えていた。

「お主は馬鹿ダナ?ワシの出した夢でワシを殺せると思うタカ」
小馬鹿にしたような笑いが辺りに響く。
政子は声のした方角に向けて、次の矢を射る。
が、笑いは消えない。
「ちょっと!大人しく射られなさいよ!」
叫んで、次々と矢を射かける。
そんな自分を自分で馬鹿だと思いながら、でも政子は諦めずにひたすら射続けた。

 

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