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北条政子の夢買物語 15

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

部屋に戻れば、頼朝が酒瓶を片手に待っていた。
「よし、では姫、飲み直すぞ」
「何で私があなたと飲まなきゃならないのよ」
言いながら、頼朝の速さに合わせて、くいくいと盃をあけていく。
政子は酒を飲んでも顔に色が出ない性質だった。父に付き合って最初に酒を口にしたのは十四の時。でも、父が出掛けてから相手がなくなった。兄は政子が酒をたしなむのをあまり好まなかったのだ。
それにしても、意外に頼朝は強い。政子と同じように顔に出さずに呑んでいく。負けるもんかとあおる。ああ、でも、さすがにちょっとここまで飲んだことはなかった。なんだか耳が遠い気がする。
そう思った時、とすんと背に何かが当たった。
「姉上」
「え?」
姉上などと呼ばれたことのない政子はきょとんとする。
「もうそのくらいにして部屋に戻られよ」
見上げれば、義時が僅かに苛ついているのがわかる表情で政子の後ろに立っていた。
「え、でも」
まだ勝負がついていない。
「いいから早く」
そう言って、義時は政子の手を引っ張り上げようとする。
政子は首を傾げた。この子、こんな子だったっけ?
「小四郎、そなたはまるで番犬だな」
「どうも」
「いやいや、別に褒めてはいないのだが、小四郎は素直だな。うん、気に入ったぞ」
頼朝は上機嫌でそう言うと、自分が飲んでいた酒の盃を上に掲げた。
「では小四郎、そなたが代わりに受けよ」
小四郎はそれを黙って受け取ると、くいと仰ぎ飲んだ。
「おお、そなた、もしやなかなかいける口か。じゃあ早速……」
と続きをよそおうとする頼朝の前で、義時は冷たく言いきった。
「これでお開きで」
さらっと片付けに入る小四郎に、頼朝は情けない顔になった。
「おやおや。泊めてくれぬのか」
「兄に殺されますよ」
「三郎か。あいつは真面目で頭が固いからな」
「ちょっと! 兄さんの悪口を言わないでよ!」
宗時の悪口を言われて、頼朝につかみかかろうとした政子は、足がもつれて頼朝の上に倒れ込んだ。抱きとめられる形になる。
「姫、実は酒に弱いのだな」
にやにやと笑う顔に、かちんと来る。
「何ですって?」
政子は手を振り上げた。調子に乗ってるこの男を一発殴ってやろうと思ったのだ。でも拳は途中で止められる。止めたのは義時だった。
「だから絡むなって。兄さんに言うぞ」
それは政子にとって最大の脅し文句。
「や、だめ! 言わないで!」
咄嗟に、自分でも驚くくらいの慌てた声が出てしまった。
「あ……」
酒ではまるで染まらなかった政子の顔が真っ赤になる。
「一の姫、そなた、もしや」
頼朝の顔が変わる。
政子はふらふらと立ち上がった。
「し、失礼します」
とにかくこの場から逃げようと戸に向かった政子の目の前に紺色の直垂。
「政子?」
それは三郎宗時その人だった。
「お前、こんな所で何をしている」
「な、何も!」
「酒を飲んだのか」
兄の眉が上がる。それから、ふと気付いたように政子の両肩を掴むと、鼻を近づけた。
「佐殿の香?」
ぎくりとする。
「お前、香が移る程近くで何をしていた」
「何も、ただお酒を飲んでいただけ」
「すぐに着替えろ」
「え」
「すぐに着替えろ! 聞こえなかったのか! 部屋に戻れ!」
見たこともない兄の剣幕に、政子は返事も出来ずに走り出した。

「佐殿、妹をからかうのは止めていただきたい」
「からかっているつもりはない。いや、なくなった」
「なくなった?」
「三郎、私は姫が気に入った。欲しい。くれぬか?」
「やれません」
きっぱりと答える宗時に、頼朝はじっとその目を見返し口を開いた。
「男の悪い癖で、人の物だと欲しくなる」
「それは、そろそろお止めになった方がいいかと存じます」
「どうしてだ?」
「そんなことばかりしていたら、いつか殺されますよ」
頼朝は笑った。
「おまえ自身が殺しそうな目をしてよくも言う。しかし、さすがは兄妹。同じようなことを言うものだな」
そう言って、上機嫌で頼朝は館を後にした。

「小四郎」
宗時は義時を呼び止める。義時は黙ったまま振り返った。
「留守にして悪かったな」
宗時は下を向いて一言呟いた。義時は、ほんの少し口元を緩めた。
「兄さんが早く帰って来てくれてよかった」

 

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