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北条政子の夢買物語 21

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

その年の暮れは大層賑やかだった。北条の館には近隣のたくさんの氏族の若者が集まっていた。その誰もが佐殿を囲んで笑顔で語り合っていた。でも政子はその後、男達の前に出ることを許されなかった。
「ああ、つまらない」
料理だけを作らされ、奥に引きこもっているのである。おまけに小四郎が土間の上であぐらをかいて書物を読んでいる。何でも佐殿に借りたそうだが、何故こんな台所で読むのか。聞いても答えない。恐らく、兄が自分を監視する為にそうさせているのだとはわかったが、そこまでしなくてもいいじゃない、と政子は思う。
しかし、確かに妹達ならうまく誤摩化してやるのだが、さしもの政子も小四郎をちょろまかす勇気はなかった。

と、
「姫、姫」
何やら聞き覚えのある声がする。何気なく政子が首を回せば、勝手口の所に見覚えのある男が立っていた。
「え?」
いる筈のない人物の突然の出現に、政子はあっけに取られて口をぽかんと開いた。
「佐殿あなた、こんな所に現れて一体何してるのよ?」
そう言ったら、頼朝は「しっ」と指を一本口に当てた。政子は、ははんと気付く。
「わかった。時子がいないかと忍び込んだのでしょう? 台所から入ろうだなんて何て奴。家人に言って捕えさせてやるわ」
半分冗談で、半分本気でそう言ったら、頼朝は慌てて政子に飛びつき、その口を手で塞いだ。
「んん?」
「こんな所を三郎に見られたら殺されてしまうではないか」
男とは何て馬鹿な生き物なのだろうと政子は思った。命がけで夜這いをしようとは。他にもっと良い命の使い道があるだろうに。
それはともかく、政子は身をよじると手を離せと目で合図した。頼朝は軽く頷くと政子の口を塞いでいた手を開く。だが、政子を囲った腕は放さぬまま。そのまま顔を埋めて来た。
「逢いたかったぞ」
政子は抱きすくめられた形になり硬直する。
「相手を間違えているわよ。お酒を飲み過ぎたのではないの?」
「酒くさいか? うむ、飲んではいないのだが」
「別にお酒の匂いはしないけど」
「ああ。今日こそは姫と逢うぞと覚悟を決めて、飲む振りだけして横に流してやったのだ、うむ」
「流した? 横に? 捨ててたってこと?」
「賢いだろう。実は先日、姫と対決した時も飲む振りをして横に流していたのだ。強そうに見えただろう? うん?」
「何ってこすい奴! お酒がもったいないじゃないの!」
「だって姫は強そうではないか。負けたら男が廃る」
「だからって不正する方がよっぽど男が廃るわよ! じゃなくて、今はそういう問題じゃないでしょ!」

その時、ことん、と音がした。ぎくりとして顔を上げたら、義時が書を床に置いて立ち上がった所だった。
「小四郎」
政子と頼朝は抱き合った形で義時と対峙する。が、義時は何も言わずに後ろを振り返った。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
そのまま歩き始めた義時に、政子は咄嗟に声をかける。義時は足を止めると黙ったまま振り返った。でも、やっぱり何も言わない。政子は、つと息を吸うと小さく懇願した。
「兄さんには言わないで」
「姉さんが言わないで欲しいなら言わない。でも」
だが、そこでまた沈黙が続く。政子はその間に頼朝の腕から無理矢理自分を救い出すと、さも迷惑そうにぱんぱんと着物を払った。義時はそんな政子をまだ黙ったまま見つめている。しばらくして、政子はとうとう沈黙に耐えきれずに続きを請求した。
「でも、何よ?」
姉の権威も何もあったものではない。義時はちらと視線を外すと口を開いた。
「いや、楽しそうだなと思っただけ」
「楽しいわけないでしょ!」
「姉さんと佐殿は、まるで兄妹みたいだな」
だって、この男に対してはまるで恋愛感情がないもの! とは、さすがに頼朝を前にしては言えない。
その時、頼朝が口を開いた。
「小四郎、私はそなたのことも弟のように思うぞ」
義時は少しだけ驚いたような顔をして頼朝を見た。
「三郎のことも弟のように思っているし、姫のことも妹のように思う」
政子は頼朝を見上げた。頼朝はとても優しい顔をしていた。
「私は多分、この北条の人達のことがとても好きなんだと思う」

 

「あいつ、何てことをしてくれるのよ」
その夜、政子は怒っていた。原因はもちろん頼朝だ。
政子の着物の袖の中にいつの間にか忍ばされた一つの数珠。それは政子のものではなかった。一見して値が張るのがわかる立派な数珠。間違いなく頼朝の物だった。
きっと台所で入れられたのだろう。それが片付けをしている時に、ことりと床に落ちたのだ。拾ったのは保子。誰の物かと聞かれてひどく慌ててしまった。
「落ちていたのよ。宴席に来たお客人のものだろうから、兄さんに渡そうと思ってたのだけれど忘れてたわ」
そう言ってごまかしたが、保子は鋭い。兄に言いはしないだろうか。とにかく保子には何かお香か紅でもあげてごまかして、兄に見つかる前に頼朝の屋敷にでも投げ入れて来ないといけない。でも、政子はその前にすることがあった。

その夕、政子はこっそりと古奈の湯に出掛けた。ここは源頼政公の側室で絶世の美女、あやめ御前が生まれた土地。ゆえに「美人の湯」と言われていた。
女一人で出掛けるのは気がひけたが、昼間、頼朝に抱きすくめられてしまったのだ。清めねば兄に会えない。
古奈の湯は混浴であった。政子は女と目立たぬように髪をきっちりと上げて烏帽子に込めていたが、うっかりとそれが落ち、豊かな黒髪が垂れ落ちる。これでは薄暗い中でも一見して女とわかってしまう。
仕方が無い。政子は髪が濡れるのも構わず、白小袖の上から急いでざぶざぶと古奈の湯をかぶると、身体を温める間もなく急いで湯屋を後にした。それでも、濡れて身体に張り付く白小袖が露にする女らしい丸みを帯びた身体に、男達はじろじろと遠慮のない野卑た視線を投げ掛けて来る。視姦されているようで政子は気分が悪かったが、とりあえずは身を清めることが出来たことだけを感謝して馬に飛び乗った。

 

 

寒い。
酷い悪寒がする。
「くしゅん、くしゅん、くしゅーん」
政子は盛大なくしゃみをすると、自らの額に手を当てた。
駄目だ。濡れた髪を夜風に当ててしまったのがいけなかったのだろう。風邪を引き込んでしまったようだ。何とかしなくては。
政子はたくさん着込んで部屋から出ると台所に向かった。
ケ……ン
微かな鳴き声に、政子はそちらを振り向く。すると、そこには五郎がいた。
「五郎? どうしたの? こんな時間に」
近づきかけてから気付く。五郎の尻から白いふわふわとした尻尾が生えている。
「あんた、白キツネじゃないの!」
普段夢に現れて政子を弱らせる白キツネが、今日は五郎に化けて政子の前にいた。
「ヨォ、風邪を引き込んだノカ?」
「ええ、そうよ。悪かったわね。ああ、そうだ。あんたに移してあげましょうか?」
政子は意地悪な顔でそう言うと、五郎の姿をした白キツネを捕まえてやろうと距離をはかる。それ、と捕まえようとした瞬間、五郎キツネは走り出した。
「待ちなさいよ!」
きゃはは、といたずらな笑い声を立てて五郎キツネは逃げ回る。軽やかに飛び回る五郎キツネを政子は必死で追いかけた。でも何と言っても五郎の足の長さである。政子は壁際に追い込む。すると、五郎キツネは隣の部屋の中に飛び込んだ。
「兄ちゃん! 姉ちゃんが風邪を引き込んだよ」
五郎キツネが飛び込んだ先は、三郎宗時の部屋だった。

 

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