menu
閉じる
  1. 流鏑馬神事(海野幸氏と大姫・後編)
  2. 『 とかじり小四郎 』北条義時物語
  3. 竹御所、若紫源氏を育てる(鞠子と三寅)
  4. 20万字もの長すぎる文章をKindle用にe-pub化する方法(Mac…
  5. 竹御所、若紫源氏を拾う(鞠子と三寅)
  6. アワの夢『 北条政子の夢買物語 』
  7. あづまがたり(頼朝と政子の出逢い)
  8. 『アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 』北条家血 お知らせ
  9. 『 腑抜けの三郎 』 ―北条重時―
  10. 連載は3月で完結。4月いっぱいで下げます。<アマカケル>
閉じる
閉じる
  1. 腑抜けの三郎―北条重時―56
  2. 更新が滞るかもしれません
  3. 腑抜けの三郎―北条重時―55
  4. 腑抜けの三郎―北条重時―54
  5. 腑抜けの三郎―北条重時―53
  6. 腑抜けの三郎―北条重時―52
  7. 小説の挿絵イラストを簡単に準備する方法
  8. 腑抜けの三郎―北条重時―51
  9. 腑抜けの三郎―北条重時―50
  10. 腑抜けの三郎―北条重時―49
閉じる

頼朝・北条好きFanSite「あづまがたり」

北条政子の夢買物語 22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アワの夢「北条政子夢買物語」

 

「まったく、お前は何をやってるんだ」
兄の呆れた顔。
政子はそのまま兄の部屋の床に寝かされていた。何枚も着物を上に重ねられる。
「髪が濡れてるじゃないか。手も随分冷えて。まだ寒いか?」
政子は首を横に振る。でも、身体はがたがたと震えていた。
「待ってろ。部屋をもっと温めてやる」
宗時の部屋は兄妹達のいる母屋より大分離れた所にあった。手習いや武芸の稽古をするのに静かで広い所がいいと、父と兄とでそう決めたのだ。だから、政子ですらほとんど訪れることはなかった。
壁に寄りかけられている数張りの弓。使い込まれた木刀。棚に無造作に並べられたたくさんの書物。その辺りに投げられている手入れの道具達。落ち着いていてしっかりとしている宗時だが、部屋の中は雑然とたくさんのものが散らかっていて、政子はふと可笑しくなった。
「どうした、大丈夫か?」
兄が大きな火桶を手に部屋に戻ってくる。政子は頷くと少し意地悪な風に口を開いた。
「兄さんの部屋ったら汚いわ。整理しなきゃ駄目じゃない」
宗時は口をひん曲げ、そっぽを向いた。
「別にいいだろう。誰が来るわけでもないし」
「あら、私が来たじゃない」
すると、宗時は政子を見て、それから「はぁ」とため息をついた。
「その内に片付けるよ」
くすくすと笑う政子に、宗時も頬を緩ませた。
久しぶりに兄とこんなゆったりした会話が出来たことに政子はほっと安堵する。遠乗りに出たあの日から、どうしても二人の間はぎくしゃくとしていたのだ。政子は風邪に感謝をした。
宗時は政子の喉元まで着物を引っ張り上げると、政子の額に温かな手を置いた。
「眠れそうなら眠れ」
「兄さんは?」
「書を読みたいから横にいるよ。辛い時は声をかけてくれ」
「うん」
返事をすると政子は目を閉じた。掛けられた着物に染み付いた兄の匂い。安心出来るその香りに、政子は深い深い眠りに落ちた。

 

「ん、ん……」
気付けば、政子はうなされていた。
いや、重いものにのしかかられたようで息が出来ない。
「何?」
目を開ければ、真っ暗な夜が頭上にそびえていた。
日も無い。月も無い。星も無い。
そして、政子は身体を何かに侵食されていた。長く太い丸太のようなものに手も足も全て絡めとられ、ぎしぎしと縛り上げられる。大蛇に巻き付かれたのだと政子は恐怖した。蛇は相手をその身体で縛り上げて絞め殺してから丸呑みにする。では、自分も絞め殺されるのだ。とそう思った時、頭が現れた。
よくある丸い頭の蛇の姿ではなかった。立派な角を生やし、長い口髭に、鋭い爪を持ったそれは、語り伝えられる龍の姿。
「角は鹿、頭は駱駝、眼は鬼、身体は蛇、腹は蜃、鱗は魚、爪は鷹、掌は虎、耳は牛」
昔読んだ書物を震える声で諳んじる政子に、龍はその鬼の眼を細めた。試すように舐めるように政子をじっと見ている。
細かく震え、死を覚悟しながらも、政子は負けるものかとその龍の鬼の眼を睨み返した。龍の眼は兎の眼にも似ていた。丸っこくて油断なく鋭く辺りを見回していて、まるで死角のない眼。
ふ、とその眼が笑った気がした。驚く政子の目の前で、龍はすうとその姿を小さく光に変えていく。そして鞠くらいの大きさになった眩いその光は、突如政子の身体を襲った。
どう、と物凄い衝撃が下腹部に響く。荒海に投げ出されたかのように身体中を揉みくちゃにされる。

その時、政子は歴史を視た。
深い深い海の底で煌めくアワ。空気と何かと混じり合ったそれは、海の波に守られて進化を遂げていく。形を変え、大きさを増し、海から出て陸地へと上がる。揉まれ、切り刻まれ、でもまた結合して新しいモノが出来ていく。不要なものは切り捨てられ、必要なものだけを残して統廃合を繰り返していく。
「そうやってヒトは生まれてキタ」
誰か、どこかで聞き覚えのある声が語り始める。
「ダガ、どうやってもヒトは不完全だった。どちらかを極めるともう片側が崩れ落ちる。そこで両極端のものを二つ合わせることとした。その瞬間、ヒトは完全とナッタ」
天と地、男と女、アとワが混じり合って融けてゆく。
その時、政子は理解した。
和合の意味を。その天にも昇る心地を。
だが次の瞬間、政子は自分の身体の内が熱くくすぶりだしたのに気付いた。灼熱の塊が身体の内にあった。すぐに肌が、髪がちろちろと紅蓮の炎をあげ始める。
政子は絶叫を上げて天を見上げた。黒く、何もないはずの空間に、たった一つ、小さな星が政子を見下ろしていた。

 

次ページ

目次へ戻る

LULUSIA-ルルシア-

関連記事

  1. 北条政子の夢買物語 19

  2. 北条政子の夢買物語 1

  3. 北条政子の夢買物語 15

  4. 腑抜けの三郎―北条重時―52

  5. 腑抜けの三郎―北条重時―55

  6. 北条政子の夢買物語 18

おすすめ記事

  1. 『 腑抜けの三郎 』 ―北条重時―
  2. 「アマカケル―北条の姫―」AmazonKindleで販売開始します
  3. 20万字もの長すぎる文章をKindle用にe-pub化する方法(Macで縦書き・無謀勝負)その1
  4. イザヤ!鎌倉「江間家の段」3(My wife’s mirror:吾妻鏡・妄想誤訳)
  5. イザヤ!鎌倉「江間家の段」1(My wife’s mirror:吾妻鏡・妄想誤訳)

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Amazon 出版物(電子書籍)


「殺さなきゃ……父が来る前に」後に北条政子と呼ばれる女は、水を滴らせた白い布で夫の口を塞いだ。「私を妻にしてください」そう願ったのは幼い頃。歳が十離れたその人、佐殿は「源氏物語」の「光の君」そのもの。いつか若紫のように望まれて、共に生きると信じてた。(長編)



捕えられ鎌倉へと送られた白拍子は、八幡宮での舞に呪をこめる。男児を殺され奥州を目指すも辿り着いたのは蝦夷だった。静御前の話。(中編)


木曾義仲の息子・義高が逃亡した。その身代わりとなって牢に繋がれた海野幸氏と、彼を助けようとする大姫の話。(短編)

ポチで応援おねがいします

にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
ブログランキング・にほんブログ村へ

おすすめ記事

  1. 腑抜けの三郎―北条重時―56
  2. 更新が滞るかもしれません
  3. 腑抜けの三郎―北条重時―55
  4. 腑抜けの三郎―北条重時―54
  5. 腑抜けの三郎―北条重時―53
ページ上部へ戻る