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北条政子の夢買物語 23

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

「政子!」
兄の声で意識が戻る。
「悪い夢を見たのか? うなされていたぞ」
政子は首を横に振って手で顔を覆った。恐ろしい夢だった。人が死んだ後にいく地獄とはあのようなものなのだろうか。
「だって」
政子は拗ねたような口調で呟く。
「兄さんが『買ってやれ』って言ったんじゃない」
政子のその言葉に、宗時は軽く首を傾げ、少し考えた後に答えた。
「ああ、時子の夢の話か」
政子は口を引き結んで横を見る。あの日、夢と鏡をめぐって喧嘩している姉妹を見た宗時は、政子に譲歩を求めたのだ。年長者が年少者に譲るのは当然の美徳とされていた。
だけど、そのせいで自分は。
「気にし過ぎだよ」
「そんなこと、ないもの」
「じゃあ、今度は俺が買ってやる」
「え?」
「悪い夢なら、俺が買ってやるから」
深い慈しみのこもった声に政子は頷きかけ、それから、ううんと首を振った。
「大丈夫よ」
そうだ、自分は考え過ぎたのだ。
「ああ、大丈夫だ。お前は一人じゃない」
宗時は言った。
「俺が一緒に抱えてやる」
低く、温かい言葉に心が震える。
どうして、どうしてそんなに優しい言葉を掛けてくれるの? だから誤解してしまうじゃない。
政子は小さく「うん」と頷くと向こうを向いた。兄の顔が見られなかった。

それからどのくらい経っただろう。
政子は掛けられていた着物を横にどけると立ち上がろうとした。が、兄に止められる。
「どうした?」
「喉が、渇いたの」
喉が焼き付くように痛かった。
「水を取って来るから、お前は寝てろ」
だが、立ち上がって戸を開けかけた宗時は、ふと何かを思い出したように部屋の中に戻って来る。政子の前を通り過ぎると、机の上の何かを手に取った。
「これを食べて待ってるといい」
宗時の手の中にあったのは、黄色い橘の実だった。
「薬になるから」
政子は頷いてそれを受け取った。
橘の実は黄金色。炎で灼かれた政子を慰めるように瑞々しく、清浄な空気に包まれていた。
「ねぇ、兄さん」
政子は話しかける。
「前にも、こうやって橘の実をくれたこと、なかった?」
でも、宗時は既に水を取りに部屋を後にしていた。

冬の夜は獣が遠鳴きをする声が遠くまで響き渡る。寒いのだろうか。寂しいのだろうか。
ふと、政子は自分の身を熱く感じた。身体の内部から燃え上がる火。
政子は掛けられた着物を横に放り出し、汗をかいた自らの白小袖も脱ぎ捨てる。
「政子?」
驚いた声に目を向けると、戸の所に宗時が立っていた。宗時は視線を外すと、手にしていた盆を床の上に置き、立ち上がった。
「すまぬ。保子を呼んで着替えを取って来させよう」
そう言って立ち去ろうとした宗時の手を政子は引っ張っていた。肌に一糸纏わず、生まれたばかりの姿で政子は宗時の前に立つ。
「行かないで」
宗時は一瞬、迷った目をした。政子は心の中では怯えながらも、真っすぐ兄を見上げる。二人の視線は交錯し、そして二人を包む世界は海の中のように音を無くした。

 

宗時の直垂を取り外したのは政子の手なのか、宗時自身の手なのかわからない。ただ、二人は散乱する着物の上で獣のように言葉もなく蠢いていた。
互いにしがみつくように固く抱き合い、相手の肉体を撫で擦っていく。首の付け根、盛り上がる肩、筋肉のついた二の腕、背の湾曲部、引き締まった腰。それらに掌を滑らせ擦る内に、熱いものが政子の下肢に押し当てられる。
はあ、はあ、と獣じみた荒い息。でも、乱れているのは自分だけではない。兄も同じように荒い息をして、耳、肩、項、乳房、腹、と政子の肌を貪り食っていた。
押し当てられた熱いものから逃れるように政子が腰を動かすと、それを追うように、逃すものかと捕えるように、宗時の大きな手は政子の臀部を揉み、太腿を持ち上げる。政子は自分の陰部が熱く溶けてしまうかのように感じていた。こんな感覚は初めてだった。どろどろとした血か何か、そう、何か蜜のようなものが溢れ出すような感覚。そこをごつごつとした長い指が掘り進めて中に入ってくる。政子は嬌声をあげた。その声を聴いて、宗時は一瞬身体を離した。だが、その次の瞬間、政子は宗時によって貫かれる。政子は息も出来ずに喘いで身を震わせ、その衝撃に耐えた。

奔流の中で、政子はただただ兄だけを見つめ続けた。そのどんな表情も、熱も、汗の一粒だって政子のものである。今この瞬間は、兄は私だけのものなのだ。

激流が過ぎ去った後、政子と宗時は一つに繋がったまま互いを見ていた。言葉は何もいらなかった。ふと、顔を近づけられ、政子は思い出して顔を背ける。
「駄目よ」
兄は口付けをしようとしていた。
「何故?」
可笑しそうに政子を見る宗時に、政子は首を横に振る。
「だって、風邪を引き込んでいるもの。駄目よ」
風邪(ふうじゃ)とは、風の中に棲む鬼や邪気である。身体の中にその邪気を引き込むと、くしゃみや咳が出て、邪気を追い払おうとしているのだと言われた。だから、口吸いなどしたら、邪気が兄に移ってしまう。でも、兄は変わらず可笑しそうな顔をして笑っていた。そして言った。
「もう既にたくさんしてる」
「え」
そう言えばそうかもしれない。政子は顔を青くした。
「ご、ごめんなさい」
申し訳なくて顔を伏せた政子にかかる優しい声。
「移せばいい」
「え」
「お前に取り付いた邪気なら俺が全てもらってやる」
そう言って、宗時は政子の唇を塞いだ。

政子はその日、やっと知った。女としての喜びを。
だが同時に女としての苦しみも知ることとなる。

 

「はつ」
聞こえた声に、政子は目を覚ます。
明け方だった。部屋の中は随分と冷え込んでいた。
「はつ」
もう一度聞こえた。それは傍らに眠る兄の口から聞こえた音。愛おしそうに、幸せそうに囁くその声に、政子は胸が張り裂ける思いがした。兄は明らかに女の名を、政子ではない別の女の名を、愛しみを込めて呼んだのである。
「はつ」なんてありふれた名前、どの姫かもわからない。噂のあった姫たちを思い出す。でも違う、思い当たらない。ということは、もしかしたら身分の低い女なのかもしれない。北条家の嫡男の嫁としてはふさわしくない相手なのかもしれない。だから、兄は結婚しないのだ。
では、何故兄は自分を抱いた?それもあんな風に優しく、愛を込めて。
私は、恐らく、その「はつ」という人の代わりに抱かれたのだ。
『痛くても、血が出ても、眠っていても、たった一度でもいい。兄とそういうことがあったと、そういう思い出があれば、自分はきっとその美しい想い出を生涯大切に守って生きていける』
そんなの嘘。
政子は数日前の、浅はかで幼かった自分を嘲笑った。
あれだけの絶頂感と、今これだけの地獄の苦しみを、たった一晩のうちに味わせるなんて、仏様は何て残酷なんだろう。

 

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