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北条政子の夢買物語 36

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

「政子、もうどうにもならなくなった」
 夜、姫の着物を繕っていたら、頼朝がさらりとした顔をして入ってきた。
「だから兵を挙げることにした。うん」
 これまた、あっさりと口にする。
「ねえ。言ってる内容と言ってる顔が、あまりに違い過ぎるのじゃなくて?」
 政子が眉をひそめると、頼朝は苦笑した。
「いや、本当にどうしようもないから、もう笑うしかないんだ」
 そう言って、頼朝は月を見上げた。
「私はあの日、もう逃げないと決めた。だから、そなたと姫を置いて奥州に逃げることは出来ない。だが、ここでもうこれ以上ただ待っていることも出来なくなったのだ。だから起つことにした」
 政子は繕っていた着物を脇にどけた。
「勝てるの?」
 その問いに、頼朝は曖昧に笑った。
「千葉と三浦が加勢してくれる」
「でも、平家は強大な兵力を持っているのでしょう?」
「元々は源氏も団結すれば兵はたくさん持っているんだけどなぁ」
「馬鹿ね! そんな過去の話をしたって仕方ないでしょ!」
 怒ったら、頼朝は笑った。
「さすがは政子。うん、過去の話をしても仕方が無い。だから未来の話をする」
「未来?」
「政子は思わないか? どうして自分たちの領土なのに、国司が勝手に決めた税を搾取されないといけないのかと」
 それは、政子がずっと思っていた、いや、兄達がずっと言っていたこと。
「武士は貴族の犬ではない。闘鶏の鳥でもない」
 昔、武田の郎党が言っていた。
『武士は闘鶏の鳥じゃない!』
「ええ、そうよ。おかしいわ。どうして何もやっていない貴族が大きな顔をしているの」
「だから、土地を本当の意味で武士の物にする」
 頼朝は地図をはらりと取り出した。国の地図だ。そこには東国の豪士の名前、土地の名前がずらりと書き連ねてあった。
「税を納める必要がないとは言わない。国が、朝廷が潰れてしまうからな。
 だが、その収納を他の人間にやらせる必要などはない。土地は、本来それを命を懸けて守っている者の物だと思う。中央で金を貢いで手に入れる物ではない」
「そう、それをあなたがやるのね」
 そう言って、政子は地図を眺めた。たくさんの氏族の名前と土地の名前。とてつもない話だ。でも、武士が団結したら? きっと、とても単純な話になる。

 と、頼朝が思い出したように口を開いた。
「そう言えば、時子が山木の代官に狙われてるんだって?」
「あなた、まさか」
 政子が鋭く睨んだら、頼朝はぶんぶんと首を振った。
「そなたの妹を口説くなんて、私はそれ程命知らずじゃないよ」
 じゃあ、他ならいいと言うのだろうか? 黙って睨み続ける政子に、頼朝は「それに」と続けた。
「そなた以外の女は皆、美人に見えなくなってしまった」
 また調子の良いことを。そう思いつつも、とりあえず政子は睨むのは止めた。
「というわけで」
 と、頼朝はぱん、と手を打った。何が「というわけ」なんだろう? と思った政子の前で、頼朝は山木の名前に筆で×をつけたのだ。
「山木を討つことに決めた」
 政子は仰天する。
「ちょっと、そんなに簡単に決めていいの?」
「ああ。時子はこの辺りの男達に人気なんだ。その時子の貞操の危機と聞けば、皆頑張ってくれるさ」
 政子は呆れてため息をついた。
「そんな理由で兵が動くもんですか」
「いや、甘いぞ。男は女の為なら命も惜しまぬもの。覚えておけ。男を奮い立たせるのは女の役目なのだ」
 政子はもう返事もせずに、着物を手に取ると縫い物の続きを始めた。

 馬鹿馬鹿しいと思ったが、頼朝は本気でやるつもりのようだった。時政や宗時らと終日顔を突き合わせ、日取り、兵の数、武器や攻め寄せ方などを話し合っていた。
 でも、政子にはまだ現実味がない話だった。

 だが、山木の館への襲撃は本当に決行される。政子はがちゃがちゃと鎧を鳴らして出掛けて行く男達を稽古にでも見送るような気分で見送り、そして戻ってきた彼らを夢でも見ているような心地で迎えた。勿論、稽古ではなく、男達の鎧は皆返り血をたくさん浴びていた。

 山木の館は落としたが、問題はその後だった。

「大庭が兵を連れてやってくる」
「伊東は平家と関係が深い。もうすぐにでもやってくるだろう」

 伊東はすぐ近くだ。だって縁戚なのだから。政子はその時になってやっと、我が身の、北条の立場の危うさに気付いた。

 頼朝の元には伊豆と相模の豪士達が集まって来ていた。一人一人に声をかけている頼朝の側に何とか辿り着く。
「頼朝殿」
 頼朝は白い顔をしていた。その顔を見たら、政子は何も言えなくなった。
 でも、頼朝は笑って言った。
「政子は、走湯権現に姫と共に身を隠していてくれ」
 身を隠す理由、そんなのは一つしか無い。でも、政子は敢えて何も言わずに頷いた。
「あそこならば安全だ」
 いつも通りの笑顔を見せようとする頼朝の心を汲むと、政子は身支度を整えた。

 

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