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北条政子の夢買物語 41

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アワの夢「北条政子夢買物語」

 

「御台様、お呼びでしょうか?」
「藤九郎、私に隠し事はない?」
盛長は一瞬黙った後、頷いた。
「はぁ、ございますが……」
相変わらずいけしゃあしゃあと答える。そして、そのまま黙りこくった。恐らく頼朝の浮気のことか、それとも別のことかと考えを廻らしているのだろう。
政子は彼の中で答えが出ることを待つのを止め、単刀直入に問うた。
「頼朝殿の付け文を届け間違えたのはあなたでしょ?本当は殿は時子に宛てて文を書いていたんでしょう?」
今更の話。わかってはいたが、まずは小手調べ。突つけばいくらでも埃の出て来るこの男。一つ一つ追求してやる。
藤九郎の目と政子の目が合う。藤九郎はまじまじと政子を見つめ、それからほっと息をついて笑顔を見せた。この男のこのような素直な顔は初めて見る、と政子は思った。
「おっしゃる通りでございます」
「ひどい家人だわね。相手を間違えるなんて」
嫌味を存分に含めて言ってやる。ところが、藤九郎は首を横に振った。
「いえ、私がわざと間違えたのです」
政子は眉をひそめると藤九郎を睨んだ。
「わざと……?あなた、自分が何を言ってるか分かってるの?」
「はい。随分と前に市でお会いしましたね。あなた様は国司の家人相手に一歩も引かなかった。そして、その後、守山八幡でもお会いした。あの時、殿は生まれ変わった。それまでの殿は八重姫様と若君を失った心痛から立ち直れずにいらっしゃいました。ただただ、死人のように日々を過ごしていた。いつか御父君の敵を討つことも忘れ、ただそこにいて息をしているだけだったのです」
守山八幡で会った時の頼朝の顔を思い出す。
「そして、その私の勘は当たった。頼朝殿はすっかりあなたに惚れてらっしゃる。
だから、御台様、どうか私のこの言葉だけは信じてください。例えこの先どんな女にうつつを抜かそうと、あの方は、あなた無しでは生きられない」
藤九郎がまっすぐ政子を見据える。政子は首を振った。
「そんなこと知らないわ。私は」
「三郎殿には申し訳のないことをしました」
その言葉で、兄にもこの男が手を回していたことが知れる。
「それでも、どうしても私はあなた様を殿のお側に欲しかったのです」

キツネの言葉が頭の中を廻る。
『お前は今まで、我慢することに慣れていた。だが、これからは欲しいものは欲しいと言え。言わなければ、それはただの空想に過ぎぬ。誰か他の者がそれを手に入れるのを指をくわえて見ているだけになるぞ』

兄も私も欲しいと言えなかったのだ。

「赦さないから」
「はい」
「藤九郎、私はあなたを一生赦さないわ」
「はい」

政子の頬を静かに涙が伝う。政子はそれをぬぐいもせずに立ち上がった。
「頼朝殿の元に参ります」
「は」
「すぐに起つわ。案内をしなさい」
「では、明朝すぐに」
「頼朝殿に会ったら一発殴ってやる」
「……は?」
不思議そうな顔をする藤九郎に政子は笑って見せた。
「この私と姫をこのような場所に待たせるなんて、一体何様のつもりって怒ってやるのよ」
すると、藤九郎はいつもの片頬を上げる笑みを見せた。
「どうぞご存分に。殿もそれを楽しみに待っていらっしゃるでしょう」

たった数ヶ月の間に色々なことがあった。死に別れるような気がしていた頼朝殿は生き延びた。一生離れることはないと信じていた兄はいなくなった。それが運命だと言うのなら、私はどうすればいい?

政子が静かに戸を開けると、姫は部屋の真ん中で大人しく眠っていた。誰の血を宿した子なのかはわからない。でもキツネが言うのなら、確かに姫は八幡大菩薩の子なのだろう。それでも自分の娘だ。

「姫、お父上に会いに鎌倉に参りますよ」
そう声をかけたら、姫は静かに瞼を開け、そして母の姿を目に映すとにっこりと微笑み、そしてまた瞼を下ろして静かな寝息をたて始めた。政子はその横に腰を下ろすと、姫の小さな掌に指を添えた。姫は赤子の時と同じように、きゅっと強く政子の指を握る。その力の強さに政子は微笑した。

『俺はずっとここにいるから』

ずっと。
あなたがずっといてくれるなら。私もずっとここにいる。

一一八〇年十月十一日、北条政子は、鎌倉の主・源頼朝の正室、御台所として鎌倉入りする。

駆け落ちをして世紀の大恋愛をした頼朝と政子の恋物語は世の娘達の憧れとなったが、政子の胸の内を知る者はいない。

― 終わり ―

 

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