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頼朝・北条好きFanSite「あづまがたり」

腑抜けの三郎―北条重時―17

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「三郎、こんな所で何しとる。探したぞ」

 揺り動かされて気付く。具親が首を傾げて三郎を見下ろしていた。

 辺りは何事もなかったのように平穏な空気が流れていた。玉砂利を踏む音、樹々を揺らす風の音、鳥の囀り。少女はと見れば、彼女もまた狐につままれたような顔で首を巡らせていた。

「狐にでも化かされたか?」

 具親に手を引っ張り上げられる。ふと、もう片方の握りしめていた掌を開いてみたら、あの玉が青白い光を灯して揺らめいていた。

「うわっ!」

 思わず玉を放り出す。それを少女が受け止めた。

「何よ、急に放り出さないでよ」

「捨てて!」

「だめよ。『預かってろ』って言われてたじゃない!」

 玉を突き返してくるのを、知らん顔をする。

「私に押し付ける気? この……腑抜け!」

「だってその玉、変だよ」

「変でも、あんたのでしょ」

 押しつけ合う二人の間に具親が顔を出す。

「これはまた、随分美しい水晶ではないか。玉眼に似合いの美しさだな」

「玉眼って、仏像の目に入れる石のことですか?」

 三郎が聞けば、具親はうっとりと玉を眺めて頷いた。

「ああ。高野山の八大童子などはそれは見事な出来映えで、今にも動きそうであったな」

 高野詣での供をした時に見た像を思い出す。生きているかのように力を持った瞳、血が通っていそうな肉感的な彫り。こんな像を彫った運慶という仏師は一体どんな人なのだろうと憧れた。

「玉眼? それって高く売れるの?」

 少女の問いに具親がにこやかに頷くと、くるりと少女は三郎に向き直った。さっきと表情が違う。まるで猫のようだ。気まぐれでいたずらな瞳。

 気付けば、先ほどの子猫は少女の胸の中で安心したように身体をぺったりと伸ばしていた。

「仕方ないわね。私が預かってあげるわよ。別に誰が持ってても問題ないでしょ」

 にっこり微笑む少女に、三郎はほっとして笑顔を見せた。

「助かる! 君っていい人だね」

 途端、少女は呆れたように頬を引きつらせた。

「あなた、本当に抜けてるのね」

「え? 何が? 腑が?」

 横で具親が噴き出す。少女もけらけらと高い声で笑っている。何だか知らないが、何だか気分が悪い。

 むっとした三郎の前で、少女が「あ」と口に手を当てた。それから三郎の頬を指差す。

「やだ、怪我してるわよ」

 指差された方の頬に手を当てれば、ぬるりとした感触と共に血が指を伝った。視線を下に落とせば肩口の辺りに赤い染みが数滴落ちていた。

「あーあ、着物が汚れちゃった」

 ため息をついたら、少女は眉を寄せて心配そうな顔をした。

「結構大きく切れてるじゃない。痛くないの?」

「うん、このくらいなら弓の稽古でよくあるし、刀なんかなら……」

 そう続けようとして、三郎は真っ青になった。

「君も怪我してる」

 少女の手の甲に血が滲んでいた。三郎は急速に血の気が引いていくのを感じる。

「ちょっと大丈夫? ひどく顔色が悪いわよ」

「ごめん。僕、自分のはいいんだけど、他の人の血が苦手で……」

 言いながら三郎は地に座り込んだ。ドクドクと苦しげに呻く鼓動。締め付けられるように痛む頭。

「うえぇぇ、気持ち悪い」

「私のなんて、かすり傷なのに」

「それでも他の人の血は見たくないんだよ」

「武士の子のくせに、本当に腑抜けなのね」

 すっかり呆れたような声。でもその口調は、以前のそれより少し柔らかい空気を含んでいた。

「こんな傷、舐めておけばすぐ治るわよ」

 少女はぺろりと手の甲を舐めながら言う。ふと、その声を懐かしいと思った。

 

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