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腑抜けの三郎―北条重時―29

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 運慶は奈良の東大寺南大門の金剛力士像、興福寺の弥勒仏などの仏像を彫った著名な仏師で、今は鎌倉の要人に招かれて将軍家や北条氏の依頼の仏像を多く彫っていた。

 憧れの仏師に会えるなんて、と目を輝かせてから、三郎ははたと気付く。

 江島に奉納ということは、当然江島に行くということ。じわりと甦る不安。でも兄や叔父が一緒ならば怖いことはないだろう。勇気を出して二人についていく。

 船で辿り着いた江島は記憶の中のそれよりも小さく、何も怖れるものなどないように思われた。

「さて、運慶殿はもう岩屋の中におられるかな」

 岩屋と聞いてさすがに足が留まる。でもその時、肩に泰時の手が乗った。

「さあ、行こうか」

 泰時はそのまま岩屋へと通じる階段をおりていく。真っすぐで迷いの無い横顔。

 そうだ。兄もあの日、あの場にいたはずだ。でも今までその話をする機会がなかった。聞いてみたい。何故自分は溺れていたのか。何故玉を握っていたのか。兄はあの時どうしていたのか、何を見たのか。でも岩屋より這い出る霊気に三郎は口をつぐみ、急いで兄の後を追った。

 運慶が彫った弁天像は岩屋の祠に祀られた。しかし、今まで見た運慶のどの像ともこの弁天像はまるで違っていた。

「こりゃまた随分と艶かしい。というか生々しい。いや、あられもないっつーか」

 それが弁天像を見た瞬間の時房の発言。

「ここまでもろ出しだと俺はちょっとなぁ。チラリと透けて覗き見出来るくらいの方が風情があって盛り上がるんですけどね」

「叔父上」

 泰時が時房を肘で小突いて諌めようとしている。その向こうには仏師・運慶が静かな顔で手を合わせていて、その前には一糸まとわぬ全裸の弁才天が座していた。

「ここ江島は島全体が女性で、岩屋は地の底の龍の巣まで繋がる、生命が生まれ出でる産道であると聞きましたので」

 淡々と喋る運慶に、時房ががりがりと頭をかく。

「そりゃまぁ、そう言われてますけどね。なぁ、これ、このままここに置いといて平気かな?」

「叔父上。これだなんて……」

 三郎はただ驚いて目をしばたたかせた。その弁天像は余りに肉感的な、現世の女そのものだった。母のようにふっくらと優しく丸みを帯びた頬。首は短くなだらかな肩に繋がる。胸はつんと前を向き、腰から下はゆったりとふくよかで、二本の膝は立てられ大きくあぐらをかいて広がっていた。でも細い腕は優しく自然に前へ出され、腹部を守るかのように、何かを掴むように宙に留まっていた。

「あの、どうして手はこのような形なのですか?」

 三郎の問いに運慶は頷いて答えた。

「見る者が各々、弁天様に叶えていただきたい願いを夢想出来るようにしたのですよ」

 その言葉の意味が分からず首を傾げる。

「弁才天は学問や芸能、財産、除災、諸々の幸せを与えてくれる現世利益の神。祈る人によって願うご利益も違う。各人が想像でそれを補い、腹の中で温めて生み出すのです」

 そこで、ぽんと時房が手を打った。

「ああ。それで陰部まで彫っちゃったって訳ね」

 あけすけな時房の言葉に泰時が頭を抱える。その時、三郎の頭の中を声が響いた。

 『江島の弁天様みたいだね』

 聞き覚えのある幼い声に三郎は辺りを見回す。誰もいない。あるのはただ暗く冷たく松明の明かりにぬらぬらと濡れ光る岩肌のみ。でも、どこか懐かしさを覚えた。不思議とそこに恐怖はなかった。

 

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