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腑抜けの三郎―北条重時―30

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 その夕刻、尼御台・政子が北条館を訪れた。朝時の顔を見るなり可笑しそうに噴き出す。

「あらあら、ひどい膨れ面。一日中部屋に篭って写経をしてるんですって? ご苦労様なことね」

 朝時は大仰なため息をついた。

「もういい加減に許してくれないですかね。俺、そんなにいけないことをしましたか?」

「まぁ、そんなことを言っては駄目ですよ。反省の色がないと言われてしまうわ」

「だって父上だって御所の女官だった母上を娶ったのに、どうして俺は駄目なんですか?」

 拗ねた顔で愚痴をこぼす兄の姿に、部屋の隅に控えていた三郎はただただ恐縮して縮こまっていた。尼御台と言えば鎌倉で一番の権力者だ。朝時と三郎にとって血縁上は伯母にあたるが、こんなに親しげに話していい相手とは思えなかった。

 政子は扇を口元に、楽しそうに笑った。

「懐かしいこと。そうよ、あなたの父上は御所の女官で一番人気だった姫の前・朝姫を見事射止めたの。でもそんな昔の話、一体誰から聞いたの?」

「父の後妻の伊賀の方です。父は昔、母を御所から攫ったのだと。だからあなたも頑張りなさいと応援してくれたんです」

「あら、そうなの」

 政子はにこやかに笑うと、つと三郎の方に向き直った。三郎は慌てて頭を低く下げる。

「あなたが三郎ね。朝姫によく似て来たこと。そろそろ元服かしら?」

 緊張したまま曖昧に頷いた時、朝時が額を床に打ち付けた。

「三郎、済まない!」

 三郎は慌てて兄の側へと駆け寄り、その頭を上げさせる。

「三郎はこの月末に元服の予定だったんです。でも俺が問題を起こしてしまったから、日延べされてしまいそうで……」

 悔しそうに唇を噛み締める朝時に、三郎は懸命に首を横に振ってとりなす。

「いいんだよ。僕、元服なんかしたくないし」

「まぁ、三郎は元服したくないの?」

 政子の問いに三郎は小さく頷いた。

「はい。本当は僧になりたいんです」

 途端、朝時が呆れた声で咎める。

「また三郎の腑抜けが始まった」

「これ、朝時。弟に腑抜けなど言うんじゃありません。それで、三郎は僧になって何がしたいの?」

 優しく導く声に、おずおずと口を開く。

「和歌が好きなんです。書も好きだし、それに僧になったら戦に行かなくていいし……」

「三郎、武士は戦で散ってこそだぞ!」

 ドン! と床を叩く朝時に、首を竦めて逃げようとする。だが政子は微笑んで言った。

「朝時、散っては駄目よ。生き残らなくては意味がないわ」

 意外な言葉に兄弟は顔を見合わせた。それから朝時が口を尖らせて反論する。

「でも頼朝公は命を懸けて名と土地を取れとおっしゃっていたのでは?」

 『一所懸命』に『土地と名の為に命を懸けよ、死んだ後の子孫のことは幕府が保証する』と、頼朝はこう言って兵を送り出したと聞いた。

「それは御家人に対しての言葉よ。ご本人は命を惜しんで真っ先に逃げ出してたわ。だって政をする者が潔く散ってしまったら、一体誰がその後の責任を持てるというの?」

 朝時が「はぁ」と曖昧に返事をする。

「それなのに突然お亡くなりになるのですもの。残された私達がどれだけ苦労したか。でも、だから腑抜けは悪いことではないのよ」

 三郎が生まれた翌年に亡くなった源頼朝。異母弟の義経を討ったり、奥州の服従を良しとせず攻め滅ぼしたりと恐ろしい人物の印象があった。それを腑抜けと豪語する政子。

「三郎、あなたには和歌の才能があると聞きました。でも武芸だって劣らないと。ただ争いを好まない気性なだけなのでしょう?」

 こくこくと頷く三郎に、政子もゆっくりと頷いた。

「そういう所は義時にそっくりね」

「父上も争いを好まなかったのですか?」

「ええ、小さい時から黙って本ばかり読んでぼんやりしてるから、私はよく『腑抜け』って叱り飛ばしたものよ」

 さっき朝時に対して『弟に腑抜けなんて言うものじゃありませんよ』と言っていなかっただろうか? そう思いつつも三郎は黙ってひたすら政子の言葉に頷いて見せた。

「三郎は京で歌仙の源具親殿に和歌の手ほどきを受けたのでしょう? あの定家殿にも教えを受けたとか。実朝が羨ましがっていましたよ。近く御所に話をしに来て頂戴」

 政子は気さくで近しい人物だった。少しだけ鎌倉に親近感が沸く。

 だがその帰り、見送りに立った三郎は鎌倉の闇を見ることとなる。

 

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