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腑抜けの三郎―北条重時―42

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 音は目を覚まして何が起きたのかと戸惑った。見たこともない場所に美しい衣を着せられ寝かされていた。化粧をした女達が笑いさざめく。浄土に辿り着いたのかと思う。

「まぁ、目が覚めたのね。良かったこと」

 衣擦れの音に目を上げたら北条政子が立っていた。

 何で? どうして尼御台がいるの?

 音は跳ね起きると畳から飛び降り、その場に跪いた。額を深く床につける。女たちの笑う声。

「お久しぶり。昨春、三崎の御所で舞を見せてもらって以来ね」

 尼御台がゆったりと腰を下ろす気配を感じながら、音は懸命に記憶を探る。どうして自分はこんな所で寝ているのか? 何があったのか?

「なかなか目覚めないから心配したのよ」

 穏やかな声と雰囲気に、音は戸惑いながらも顔を僅か上げた。それからふとそれを思い出して袂に手を入れる。

「あの、いただいた鏡、大切にしております」

 だが、それを取り出そうとして気付く。いつもの着物ではなかった。慌てて周りを見回す音に、尼御台は部屋の隅に置かれた美しい細工の小机を指差した。

「あなたの持ち物はあちらにありますよ」

 確かに鏡が置かれている。そして小箱も。でも、玉を入れた袋がない。

 そうだ、自分はひどい光に包まれて意識を失ったのだ。

「私はどうしてここに?」

 おずおず訊ねると政子は控えていた女たちに目配せをした。衣擦れの音と共に女達は部屋を下がっていく。

 

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