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腑抜けの三郎―北条重時―50

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 その頃、修羅の場は南庭へと移っていった。義秀はまさに鬼神であった。彼に挑んだ名のある武将が次々に倒されていく。御所方の御家人は義秀を取り巻き、いかにして彼を止めるかと息を詰めていた。

 そこに太刀を持って勇ましく現れたのが北条朝時だった。

「朝夷奈義秀殿! 我は北条義時が次男、朝時! 謀反人・和田を成敗する。ご覚悟!」

 義秀は朝時の太刀を鎧通しで軽く受け止めると、そのまま軽く横に薙ぎ払う。

「北条の次男? ああ、御所の女官に手を出して蟄居してたってのはお前のことか」

 朝時は太刀を軽くいなされよろける。だが急いで体勢を整えると顔を真っ赤にして叫んだ。

「愚弄するな!」

 義秀は構えを少し解き、緩やかに立つと片方の口の端を持ち上げた。

「お前の弟の三郎はどうした? あの腑抜けは戦場に出ているのか?」

 朝時は眉をひそめる。それから答えた。

「重時は京だ」

「この大事な時に京だと? さすがは腑抜け」

 義秀は大仰に驚いた顔をし、それから笑い出す。朝時はカッとして刀を振り上げた。

「弟を腑抜け呼ばわりするな!」

 だが、その刀が義秀に届く位置までのあと一歩、二歩を踏み出す勇気が足りない。

 相手が自分と互角に戦える相手か、対峙すれば如実に知れる。相手からの気が自分の気を圧倒し足を竦ませているなら、それはもう敗けている。

 ……駄目だ、とても敵わない。朝時は手が冷たく硬直するのを感じた。だが無理に自分を奮い立たせようとする。刀の柄を握り直す。

 北条の為に命を投げ出せなくて、そんなことでどうやって北条を継げるというのだ。僅かでいい。義秀に傷をつけねば北条の名折れになる。

 殺気をこめて義秀を睨む朝時に義秀は静かに微笑んだ。だが義秀のその目は本気の殺気を含み、次の一撃で勝敗が決することが容易に知れた。

 義秀はゆっくりと腰の太刀に手を伸ばす。朝時は覚悟をして息を詰めた。

 ここで散るのか。だがせめて一太刀でも浴びせて散らねば。

 だがその瞬間、朝時の頭の中を閃いたのは尼御台・政子の声。

『散っては駄目よ。生き残らなくては意味がないわ』

 粋がる自分を静かに諌めた政子の言葉。

『政を治める者が散ってしまったら、一体誰がその跡を継げるというの?』

 狭まる間合い。だが朝時は咄嗟に身を翻した。義秀の太刀筋は朝時の腕を掠め太腿を裂く。あのまま突っ込んでいたら確実に首を取られていた。

 義秀は一瞬驚いた顔をした後、刀を持つ手を下ろす。

「ほぅ、勇ましく出ては来たが、やはり生き延びようとするか。さすがは北条の猿め」

「何だと?」

「北条は石橋山敗戦時の宗時以外、戦死した者はない。逃げ足ばかり速く、しぶとく生き残るではないか」

 朝時は血が流れる太腿を強く抑えながら義秀を睨み上げた。だが出血が多いせいか視界がどんどん暗くなっていく。大男の義秀が更に巨大に見える。

「北条を……愚弄することは許さない!」

 太刀を杖に懸命に立ち上がろうとした朝時の前に、横に、男達が太刀を手に現れた。

「若! お逃げください!」

 朝時は驚いて目を見開いた。朝時の前に立ったのは北条の家人達だった。

「退いてください。ここは食い止めます!」

 無理だ。敵うわけがない。だけれど朝時は退いた。朝時をかばった家人達は次々と義秀の凶刃に倒れていく。

 義秀は足を引きずりながら退く朝時の背に向かって叫んだ。

「逃げればいい! 逃げて生き延びてみろ。それで何かを為せると思うならばな!」

 手向かう家人達をことごとく斬り捨て、義秀は燃えゆく御所を振り仰いだ。

 初めて頼朝公に拝謁したこの大倉御所。あれ程光り輝く人は見たことがなかった。男として惚れた。命を懸けるに値する方だと思った。六浦への街道沿い、朝夷奈の地の護りを任され、誇らしい気持ちで御所に通った。

 その大倉御所が暗い空を炎で赤く染め、燃え落ちようとしている。だが、もう頼朝公はおられないのだ。義秀は馬の鼻を南に向けると御所を後にした。

 

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