鎌倉の市街地でも激戦が繰り広げられていた。幕府方の大将として軍を指揮していたのは北条泰時。彼は和田の進行を一歩も引かずに頑強に押し留めた。
戦が長時間に及ぶにつれ、近隣諸国から御家人達が兵を引き連れて鎌倉の町になだれ込んで来る。彼らは互角にやり合う北条と和田の軍の間で一瞬身の置き所に迷う。
だが泰時の迷いない声に、次々に北条方へと引き込まれていった。
「和田と土屋、渋谷らが謀反を起こして鎌倉殿に弓を引いた。御所は落ちたが鎌倉殿に別状はない。敵は散り散りになって逃げている。ことごく召し捕ってその首を鎌倉に持参せよ。今こそ鎌倉殿の御恩に報いる時!」
北条方は開戦当時は防戦一方だった陣形を、徐々に和田を追い込む形へと整えていく。和田軍は一旦南へと下り、由比ケ浜へと集った。
「鎌倉に集う新手の御家人達の多くが、北条方に味方していきます」
その報告を和田義盛は豪快に笑い飛ばす。
「弱兵がいかに増えようが畏れることは無い! 全て討ち取ってやれば良いだけだ!」
だが本来の開戦日の変更、味方の筈の三浦の裏切り、断たれた兵糧、未だ到着しない相模の同胞。和田の軍兵は疲弊していた。
その夜半、鶴岡八幡宮。護衛に守られ、音を含めた女衆は夜が明けるのをじっと待っていた。普段は静かな八幡宮が今日は不気味に揺れている。下界での騒動がここまで伝わっているのだ。
「鷹司冠者殿、高井三郎殿が討たれたと」
合戦の噂はひそひそと入ってくる。
「足利殿は間一髪逃げ果せたとか。馬に巧みでおられるから命拾いしたのでしょう」
「義時殿のご子息も朝夷奈殿に勇敢に立ち向かわれたらしいけれど」
音は掌の中の玉をぎゅっと握りしめる。
「義時殿のご子息って重時のこと? 重時がどうしたの? 無事なの? 怪我したの?」
「も、申し訳ありません。そこまでは……」
濁される言葉に音は身震いした。そうだ、重時は元服を済ませた武士なのだ。それも執権の三男。長兄の泰時が大将ならば出陣して何らおかしくない。
音は立ち上がった。羽織っていた萌葱色の小袿を脱ぎ捨てる。
「音姫? どうなさったの?」
白い小袖一枚で歩き出した音に御台所が声をかける。音は立ち止まり政子を振り返る。
「尼御台様、ごめんなさい。私、行きます」
頭を下げると身を翻して駆け出す。警護の者が慌てて制止しようとしたが政子は目でそれを制した。
「尼御台様、よろしいのですか?」
女達の言葉に政子は頷いた。昔の自分を思い出して、そっと微笑む。
「それでこそ武家の姫ですよ」
お久しぶりです。
うわあ、連載めっちゃ長くなってる!和田合戦まで行くとは!
重時大人になっちゃってるし!!!うわあ、こんなに長編、大変でしたね、お疲れ様です。
すごく途中経過きになるけど、前に龍様の長編読んだ時、普通に半日以上かかったので、もう少し時間が出来るまで我慢します。
あと、続き気になってしまうほうなので、連載途中より連載終了後の方が安心して読めるし…。
そっか、でも、もう物語の中では重時ちゃんじゃなくなっちゃったのね。
また来ますね!寒くなってきましたが、お身体を大切にして、ご自愛くださいませ。
失礼致します
桜さん、こんにちは。
重時、実はまだ半分だったり・・・長くてごめんなさい〜
和田合戦で前半が終わって、その後、承久の乱までいくのです。
計算してないけど100くらいいくのではないかと(汗)
毎日更新出来たとしたら、あと2ヶ月くらい?
なので、またしばらくしたら遊びに来てくださいませ〜
連載終了したら一定期間載せた後に、また下げてe-pub化する予定です。
重時ちゃん、また別のでも登場させたいですわ〜
あと三浦胤義さんも。