タグ:北条朝時
六月二十五日、重時は九条三寅の供として六波羅より鎌倉に向けて出発する。鎌倉に入る直前、迎えの人々と合流した。「よぉ、久しぶり。大役を仰せつかったってのに相変わらず腑抜けた顔してるじゃ…
『 腑抜けの三郎 』 ―北条重時― 目次第一章「江島の辯才天」01 02 03 04 05 06 第二章「海賊の守り主 龍女オトヒメ」07…
その頃、修羅の場は南庭へと移っていった。義秀はまさに鬼神であった。彼に挑んだ名のある武将が次々に倒されていく。御所方の御家人は義秀を取り巻き、いかにして彼を止めるかと息を詰めていた。…
その夕刻、尼御台・政子が北条館を訪れた。朝時の顔を見るなり可笑しそうに噴き出す。「あらあら、ひどい膨れ面。一日中部屋に篭って写経をしてるんですって? ご苦労様なことね」 …
その昔、奥州征伐の年にも人魚が浜に流れ着いたと聞く。人魚が浜に上がる年は災いが降り掛かると言われていた。だから、人魚とは恐ろしいものに違いないと三郎は思っていた。 でもこの人魚は…
鎌倉初期、江間の館は御所の南方に小じんまりとあった。頼朝の近従だった義時がすぐに参内出来るようにと御所の間近に建てられたのだ。その小さな庭ではいつも子供達の声が響いていた。「ほら…
神罰――? 小さく首を横に振る三郎に、次郎兄はぎょろりと目を剥いた。「将軍様が禁忌を犯して探らせた伊東と富士の洞穴には、巨大な大蛇が棲んでいたんだと。それらを斬って捨てた…
蒸し風呂のような凪の刻が過ぎると、今度は風が海に向かって流れ始める。耳に心地よい波の音、汗ばんだ身体を優しく撫でる風。ついうとうとと眠りに落ちかけた時、次郎兄が口を開いた。「起き…