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将軍様はお忙しい。京から文が、諸国から報告が届く。朝も夜もない。だが将軍はまだ数え二つの小さな若君。よって、すぐに飽きる。泣く。使いが文言を述べていても聞くわけがない。よちよち歩き回る。…
六月二十五日、重時は九条三寅の供として六波羅より鎌倉に向けて出発する。鎌倉に入る直前、迎えの人々と合流した。「よぉ、久しぶり。大役を仰せつかったってのに相変わらず腑抜けた顔してるじゃ…
『 腑抜けの三郎 』 ―北条重時― 目次第一章「江島の辯才天」01 02 03 04 05 06 第二章「海賊の守り主 龍女オトヒメ」07…
重時は泰時の陣にて、膝をつき懇願していた。「兄上、もう勝敗は決しました。どうか和田への寛大な処分をお願いします」 泰時はそっと目を閉じて溜息をついた後に小さく口を開いた。…
「朝時は伊賀の方とうまくいっているの?」 そっと囁くような辺りを窺うような声。三郎はおずおずと小さく首を縦にふる。「はい。兄はあの通り屈託のない性格で、誰とでもすぐに打ち解…
締切なんとか間に合わせてきました。今回は前回の焼き直し。でもタイトル変えて、内容も180度くらい変えました。「頼朝を殺した」が「頼朝を守った」になりました(いや、守り切れないんだけどさ)。うちの頼朝さんは、やっぱりこうい…
運慶は奈良の東大寺南大門の金剛力士像、興福寺の弥勒仏などの仏像を彫った著名な仏師で、今は鎌倉の要人に招かれて将軍家や北条氏の依頼の仏像を多く彫っていた。 憧れの仏師に会えるなんて…
「三郎、大丈夫か?」 過ぎ去った嵐の後、しばらく硬直していた三郎に優しい声をかけてくれたのは泰時だった。「彼はからかっているだけだ。気にするな」 泰時兄はいつも冷静…
時房は義秀の前にひれ伏してる三郎を認めて、驚いた顔をした。「三郎? お前、こんな所で何をしてる?」 叔父の顔を見た三郎が泣き笑いの顔をしたと同時に、さっと横に人影が現れて…
鎌倉初期、江間の館は御所の南方に小じんまりとあった。頼朝の近従だった義時がすぐに参内出来るようにと御所の間近に建てられたのだ。その小さな庭ではいつも子供達の声が響いていた。「ほら…